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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ベルファスト」


本年度オスカー脚本賞受賞作。監督・脚本のケネス・ブラナーの幼少期を投影し、故郷ベルファストを描いた自伝的作品です。私はオスカーは作品賞より、脚本賞を取った作品を気に入る事が多く、今回もそうでした。それほど好きでなかったブラナーですが、愛したくなった作品です。

1969年、北アイルランドのベルファストに住む9歳のバディ(ジュード・ヒル)。しっかり者の母(カトリーナ・バルフ)と兄ウィル、ロンドンに出稼ぎ中の父(ジェイミー・ドーナン)の四人家族で、バディは近所の住む祖父母(キアラン・ハインズ、ジュディ・デンチ)の元には、放課後必ず立ち寄ると言う仲の良さです。存分に子供時代を謳歌していたバディですが、ある日プロテスタントの暴徒がカトリック系住民を襲撃し、平穏に共存していたプロテスタント系住人とカトリック系住人の対立が始まり、ベルファストの街に、大きな影を落とすようになります。

私が目を見張ったのは、バディを含む子供の視点が、とても明朗で元気いっぱいである事。大人たちは、子供たちに子供らしい日常を送らせるべく、一生懸命に生きている。才人で名高いブラナーですが、時に少々臭味のある芝居、英国紳士独特の皮肉なユーモアが、私的にはイマイチでしたが、なんなの、この素直さは?皮肉のない気の利いたセリフやユーモア、子供は天真爛漫、大人も喜怒哀楽や貧乏を隠さず、人情味がたっぷり。お高く止まったところが、一切ありません。

鑑賞前は、宗教の対立を子供の視点から描いた作品かと想像していましたが、これはブラナーが故郷や家族への、愛情や郷愁の思いの丈を描いた作品なのだと、理解しました。父母は祖父母を気遣い、出稼ぎから帰ったお父さんと、家族みんなで映画鑑賞(「恐竜100万年」だ!ラクウェル・ウェルチだ!)。なけなしの生活でも、クリスマスには、子供たちへの精一杯のプレゼント。どんなに紛争が激化しても、学校へは行かせる。おしゃまな初恋、放課後のサッカー。大人は子供の健全な生活を守るのに、全力で頑張る。そこには温かで確かな、家庭の絆がありました。


ブラナーは私より一つ年上で、同じ時代の空気を吸った人です。バディのプレゼントに、「サンダーバード」関連があって、私も大好きで観ていました。私の育った家庭は、これらとは真逆の寒風吹きすさぶ家庭で、たっぷりあるのはお金だけ。それが嫌で堪らなかった私が、この手で育んだ家庭は、ブラナーが育ったベルファストの中と同じです。幸せいっぱい、尽きせぬ感謝を感じさせる画面は、自分の結婚後の人生をブラナーに肯定して貰ったようで、心に沁み渡ります。

そしてお話しの軸となるプロテスタント系とカトリック系の争いですが、バディの家庭はプロテスタント。少数のカトリック系を取り込みたいがため、起こった抗争のようですが(←合っているのか?)、そう思っているのは一部だけで、ほとんどはバディ家のように、平穏に共存していたい思っているよう、感じました。平和を望む方が多数なのに、口をつぐまされるのは、今も昔も世の常なのですね。

プロテスタントの牧師のさんの説教なんですが、不気味で怖い(笑)。ホラー映画の一場面みたいに、絶叫しながらお話ししています。愛想笑いしながら、「とても感動しました」と言うバディに爆笑。ちゃんと聞いてないのに。ここはブラナーお得意の手法で、宗教を皮肉っているのだと思います。

最後までわからなかったのが、お父さんの借金の理由。仕事?このお父さんは、善き人で、今も昔も出稼ぎや単身赴任で、そこで女作って帰って来なくなる、または家庭に足が遠のく不実な夫もたくさんいる中、二週間に一度は必ず帰り、お金の事で怒る妻に(その気持ち、良く解る)お皿を投げつけられてもグッと我慢し(偉いぞ)、父親としての役割もきちんと果たしている。本当に何の借金だったんだろう?

もちろんしっかり者で美人のお母さんも、とても良かった。彼女の一挙手一投足、ロンドンに行きたくないと言う感情も、手に取るように解りました。とにかく夫の留守中、子供だけは何が何でも絶対守ると言う気概が伝わってくるところが、一番好きです。盛大な夫婦喧嘩するところも良かった(笑)。

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04月14日(木)
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