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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ウェストサイド・ストーリー」

凄く良かった!素晴らしい!いつも書いていますが、私は長い映画が嫌いで、ミュージカルにも低体温(ついでにSFも)。それでもスピルバーグが、この普及の名作をリメイクするなら、観るしかありません。復習なしで臨みましたが、新たに作ったリタ・モレノの役柄以外、ほぼ元作に忠実だったと思います。今こそリメイクする作品だと強く思いました。監督はスティーブン・スピルバーグ。
1950年代後半のニューヨークの下町。ポーランド系移民のジェッツと、プエルトリコ系移民のシャークスが対立しています。しかし、ジェッツのリーダーだったトニー(アンセル・エルゴード)と、シャークスのリーダー、ベルナルド(デヴィッド・アルバレス)の妹マリア(レイチェル・レグラー)が恋に落ちます。
元作を初めて観たのは、実はテレビのノーカット版です。マリアの吹替は大竹しのぶだったと思う。今でこそ花も嵐も踏み越えて、女の人生百戦錬磨の大竹しのぶですが、当時は清純で愛らしく、若手演技派のトップでしたから、マリアのイメージに重なって、私は違和感なかったです。その後、一度劇場で観ました。元作の字幕では、「ジェット団」「シャーク団」でした。
冒頭、立ち退きの土地が現れ、お馴染みの曲に乗せ、少年たちが指を鳴らして少しずつ集まるプロローグを観た瞬間、何故スピルバーグがこの作品をリメイクしたのか、とても腑に落ちました。世界中の国に各国の移民が渡り、その土地に根付いて子を生している現在、この作品で起こっている軋轢は、あちこちの国の「今」なのです。
刑事が現在のジェッツのリーダー、リフ(マイク・フェイスと)に言います。「イタリア系が懸命に働いて金持ちになっている中、お前たちの親父や爺さんは、アル中薬注、売人に強盗。母親は売春婦だ。
ろくでなしの親の元に生まれたのがお前たち」と、若者たちの自尊心を踏みにじる。底辺で家庭の愛に恵まれない若者たちは、昔で言う愚連隊となっている。同じく底辺でも、まだアメリカに来て日も浅いプエルトリコ系は、自分たちを脅かす脅威だったろうし、親族や同胞の絆の強さに、嫉妬や憧れもあったでしょう。そしてアメリカ人と同じ白人であるのに、貧しい。
これは、ニューカマーの移民に、自分たちの仕事を奪われるのではないか?と脅威に感じている、古くからの移民や貧しい人々の感情と重なります。トランプ元大統領の移民排除の政策に賛同していたのは、まさにこの層です。スピルバーグがいつからリメイクしたかったのかは知りませんが、トランプ政権が引き金になったんじゃないかしら?
ほぼ完璧な元作なんですから、変に弄らないのは正解でした。変更はジェッツの溜まり場のカフェ兼ドラッグストアの店主が、元作のドックからその夫人でプエルトリコ人のバレンティーナに変更になっていた事くらい。この役がリタ・モレノ!90歳にして演技も素晴らしく、きちんと歌声まで披露して、拝みたくなりました。
他には、アニータ(アリアナ・デボーズ)がジェッツに乱暴されそうになった時に、ジェッツガールズが「止めて!」と涙ながらに懇願したのは、元作にはなかったと思う。この変更も、me tooに連動されたものでしょう。良かったと思います。
バレンティーナは白人のドッグと結婚。融合と和解の象徴です。私が中学の時の社会の先生が、人種差別を無くすには、異人種で結婚して、混血の子を作る事だと言ったのを、思い出しました。少々乱暴な物言いですが、愛情があるなら相手を尊重するはずだし、異文化を受け入れるでしょう。スピルバーグも、モレノ出演なら重要な役にしたく、その意図があったのでは?
今回痛感したのは、楽曲の素晴らしさ。「クール」「トゥナイト」「マンボ!」「アメリカ」等々、大昔の作品なのに、若い人も絶対聞いた事があるはず。全く古さも感じず、見事なダンスと共に、スクリーンいっぱいの躍動感が広がる様子に、本当に胸が躍りました。
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03月01日(火)
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