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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「キングダム」


すごく良かった、素晴らしい!全然興味がなかったのですが、親愛なる映画友達の熱い感想を拝読して、ではではと鑑賞。最初から最後まで馳走感と躍動感が迸り、とても楽しく幸せな140分でした。お友達に感謝。監督は佐藤信介。

紀元前245年、春秋戦国時代の秦。戦国孤児の信(山阜ォ人)と漂(吉沢亮)。奴隷として売られましたが、剣の腕を磨く事で、今の境遇を脱出し、大将軍になるという大いなる夢を抱いています。ある日、漂だけが王宮に召抱えられ、二人は道を分かちます。しかしその後、瀕死の状態で信の元に戻ってきた漂は、ある願いを信に託し息絶えます。漂に託された地図を元にその場所に行くと、待っていたのは、漂と瓜二つの秦の若き王エイ政(吉沢亮二役)。エイ政は、腹違いの弟成キョウ(本郷奏多)の反逆によって、その地位を追われたのです。漂の意思を継ぎ、信はエイ政を王に戻すべく、共に戦う事を誓います。

原作は有名はコミックで、現在47巻が発売中でまだ未完です。最近様々なコミックが映画化され、中にはお子様ランチ+α的な作品も多く、時間がありゃ観ますが・・・でした。この作品も公開前は、確かそんな風評だったと思います。

それがそれが、堂々たる風格の立派な作品に仕上がっています。コスプレを題材にした大作は、どうも邦画の苦手なカテゴリーみたいで、多くは陳腐な感じが否めないのですが、この作品はちゃんと人海戦術とCGの境目も滑らかで、山界の場面は、ハリウッドにも引けを取らないと思います。数々の剣を使った戦いの場面も、チャンバラとは一味違う、でも中国作品のようにワイアーを駆使するのでもなく、スピードと重量感を一体に感じる素晴らしさ。血が沸き肉踊る感情を、邦画で感じるとは感無量です。

まず脚本が良いのでしょう、膨大な原作から刈ってまとめるのが上手い。全く未読の私にも、筋やポイント、何を軸にし訴えようとしているのか、誰にでも解る。もちろんその上手い脚本を元に、画面に映したのは監督や撮影です。ちなみに監督も脚本に携わっているようで、これは重要ポイントかも。

衣装もオーソドックスな中にもキャラにあった個性も浮き彫りにし、一番良かったのは、全ての俳優に似合っていた事。特に長沢まさみと大沢たかお!。
主役である山阜ォ人と吉沢亮を、中堅・ベテラン・大ベテランが、しっかりキャラを確立して、盛り上げると言う理想的な展開が、長年映画を観続けている者としては本当に涙が出るほど嬉しかったです。重厚感と若々しさが見事に共存していました。

もうこれだけでも花丸あげちゃうわ、なんですが、しっかりストーリーも深みがありました。逆境の出自の中、正当な方法で這い上がろうとする者。王の子として生まれながら、舞妓の母の血を継ぐと言うだけで、王室出身の母を持つ弟に蔑まれると言う理不尽。若い者を守り立てるはずの大人が、自分が権力を持つため良いように転がそうとする、魑魅魍魎が渦巻く王宮の様子が、余すところなく描かれます。

その問いに対するアンサーが素晴らしい。エイ政は魑魅魍魎に対しては奇策を練り、弟成キョウに対しても、一つ一つ卑小さを剥がして行く。私が一番感動したのは、400年前秦に裏切られた過去を怨み、和睦を拒む山界の人々に、「怨み辛みをいつまでも持ってんじゃなくて、今度こそ共に手を携えて、もっと栄える方が、墓場の人間も喜ぶんじゃねぇのかよ!」と言う信の説教。偉い!本当にそうだよ。

出演者はみんな好演でしたが、私が目を奪われたのは、とにかく吉沢亮!陰りのある綺麗な子だな、くらいの印象でしたが、その陰りが若きお飾りの王としの憂いを表現。知性と胆力を併せ持ち、孤独な境遇に負けまいと、人を見る目と優しさも養われている。自ら命を張って戦闘の先陣を切る様子には、感動すらしてしまった。本当に素晴らしかったです。助演男優賞、どこかであげて!

山阜ォ人も健闘していました。アクションも多くを担っていたそうで、立身出世の大願を胸に、熱い血の滾る信像は、充分こちらの届きました。


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05月01日(水)
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