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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「勝手にふるえてろ」



いや〜面白かった!観て一週間経ちましたが、記憶は鮮明。老若の「女子」なら、ヒロイン・ヨシカに、過去・現在の自分の面影を見るんじゃなかろうか?と言うか、そういう女子が、私は好きです。妄想好きと言う女子の特性に斬新に切り込んだ、女子のバイブル的映画だと思います。監督は大九明子。

ヨシカ(松岡茉優)は会社の経理課に勤める24歳の女子。絶滅種の動物が大好きで、博物館からアンモナイトを払い下げて貰うオタク女子です。同僚のクルミ(石橋杏奈)と仲が良く、コイバナもしばしば。しかし現実に好きな相手がいるクルミと違い、ヨシカの相手は中学の同級生だったイチ(北村匠海)で、もう10年間会っておらずの、片思い。そう、ヨシカは彼氏いない歴=年齢のバージンです。しかし会社の営業課のニ(渡辺大地)から、人生初告白されたヨシコ、脳内のイチと現実の二のどちらを選ぶ?

冒頭、きゃりー・ぱみゅぱみゅと見紛う、趣里演じる可愛い金髪少女相手に、美し〜い涙を流しながら、「でも私、やっぱりイチが好きなの・・・」と独白するヨシカ。そうだよそうだよ、恋は打算じゃないんだよ!と、まだ何にも始まっていないのに、一瞬で心が乙女に戻ってしまい、ヨシカに肩入れする私(笑)。その後の怒涛の展開を鑑みると、凄く上手い導入です。

今のヨシカは、雪国の実家から女一人、大都会の東京に出てきて、きちんと一人暮らしを確立。お洒落も上手で、あのシーンこのシーン、本当に可愛い。なのに彼女は、中学時代イケてなく、友達もいなかった過去を引きずっています。多分自己肯定が低いと言うか、上がらないのですね。イチを思い続けているからと言うより、その自己評価の低さから、イチは恋愛で臆病になっている彼女の、隠れ蓑だったんじゃないかと。

それがニからコクられると、タイプでもないのに、あちこち言触らし有頂天になるヨシカ。若い頃女としての自己評価を上げる、手っ取り早い方法は、男だもん。すっげーわかるわ。その点、みんなが狙っていそうな同僚男性に、自分からアタックをかけるクルミは、確かにそれなりに恋愛は経験しているのでしょう。

妄想のイチとの会話では乙女、現実の二とは、がさつで強気な自分を見せるヨシカ。でもこれは、猫を被っているのでも素でもなく、両方彼女自身なのだと思います。若い頃はまだ主体性に乏しく、悲しいかな男性によって、コロコロ無自覚に自分自身も変わっちゃう。これを自覚してやっているのは、性悪女です。男性諸氏は、気をつけてくれ給え。

自分の失火で焼死するかも?の思いをしたヨシカ、一念発起して邪な手で同窓会を開き、イチとの再会を試みます。この邪な手も、コミカルに描いていますが、非常に切ない。私如きの名前で開いても、誰も来てくれないと思っているんでしょう。そうまでして再会したイチとの会話も弾み、期待満々の彼女に、イチは衝撃の一言を投げかけます。

いや〜、これは衝撃ですよ。自分の10年間の思いも木っ端微塵にする破壊力。しかし待てよ、ヨシカだって、きちんと名前を呼ぶのは、クルミだけでしょ?他は全て彼女がつけた仇名で、名前を呼ぼうとはしない。知らず知らずに、自分から一線を引いているのかと感じました。大事なのは未来、過去なんか花も嵐も踏み越えればいいものを、「嫌だ〜、イチ君ったら!」と、切り返せないヨシカは、大層傷つきます。

そこから一気にミュージカル調になり、調べに乗ってヨシカの真実の独白。これがあなた、涙無くして観られません。そーだったのかーと、滂沱の涙の私。きっとヨシカは自分を変えたくて、東京に出てきたのね。気持ちを切り替えて、ニとのデートに励むヨシカに、母のように安堵した私でしたが、二の余計な一言から、疑心暗鬼が肥大し、ヨシカの大暴走が始まります。好人物なれど、ニもあんまり女性経験はないと観たね。


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01月20日(土)
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