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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「団地」
上映後に舞台挨拶のある日曜日、観てきました。先に書いておきますが、私はこの作品大好きです。多分年末の私のベスト10にも必ず入るだろうと思う程好き。ですが!これ、トンデモです(笑)。まさかの〇〇。あぁそれなのにそれなのに。親愛なる映画友達の方によると、あのキネ旬でも評判が良いそうな。映画秘宝とちゃいまっせ(笑)。これはね、あっと驚く展開になる、それまでのディティールが、どれだけ丹念に描かれ、かつ味わい深かったと言う証拠かと。団地に暮らしてウン十年、そう私は現役団地妻。この団地妻と言う響きに、淫靡な郷愁のある大人の方、何のこっちゃ?と言うお若い方皆々様、どうぞご一読お願い致します。

ある出来事がきっかけで、営んでいた漢方薬局店をたたんで、古い団地に越してきた清治(岸部一徳)とヒナ子(藤山直美)夫妻。半年が過ぎた時、薬局時代顧客だった真城(斉藤工)がやってきて、どうしてもいつもの薬が欲しいと言います。宅配便でやり取りする話がまとまった矢先、今度は次期自治会会長に清治を推薦したいと、現自治会長・行徳(石橋蓮司)の妻・君子(大楠道代)がやってきます。しかし選挙結果は行徳が当選。いやいや立候補したようながら、密かに団地のためにお役に立とうと思っていた清治は傷ついてしまい、「もう僕は死んだ事にしといて」言い、床下収納庫に隠れてしまいます。やがて何週間も清治の姿を見ない住人たちは不審に思い、ヒナ子が殺したのでは?と言う噂が、団地中に広まります。 

私の住む団地は高層住宅でエレベーターあり。敷地もこじんまりとしており、一見すると普通のマンションのようで、知人に団地だと言うと、「えっ?あそこ団地やったん?」と、たいがい聞き返されます。ヒナ子の住む団地は5階建てのEVなし。昔はEVを付ける基準は6階建て以上でした。今は低層階住宅でもEVがあるので、そこから相当古い団地だと推測されます。間取りもうちとは異なっていますが、生態はだいたいあんなもんです(笑)。

実はうちもね、最近夫が交通事故に遭いまして、一か月半ほど仕事を休んだんですね。入院の必要なし、しかし安静と言うことで、病院に行く以外は、しおしおと隠遁生活の夫。その間、

「お宅の御主人最近みぃへんけど、元気にしてはるの?」と、あの人この人に何べん聞かれた事か。その度「ええ、元気にしてますよ。」とニコニコと、私も何回嘘八百答えた事か。夫の怪我はトップシークレット。だってこの作品と同じやもん。「実は・・・」と誰かに言ってみ?噂が尾ひれ羽ひれ付いて回る事必死やもん。

「あそこ(うちの夫婦)、なんかあったで。別居か離婚かしたんちゃうん?」
「そうか?仲良さそうやったやん?」
「そんな家こそ、危ないねん」
「どっちかが浮気したとか?」
「あっこ、旦那さん男前やし、奥さん可愛いし」(←これは私の妄想・ワハハ!)。

いやいや、上四行は、確実に言われてたね。だいたい仲の良い人は、そんな事誰も聞けへん。聞いてきた人は、ほとんど挨拶程度の人ばっかりです。そやから、「殺人やて、そんなアホな・・・」と全く思わず、あるあるこの展開!と、納得しまくりでした。また竹内郁子や濱田マリらの、大阪のおばちゃんの井戸端会議風景が、上手い事作品に溶け込んでいるんやね。噂を真実のように決めつけ、正義者ぶる者、振り回されて疲弊する者。その滑稽さを、ユーモアたっぷり、かつその奥に辛辣を滲ませて描いています。この光景、団地だけではありません。毎度お馴染み、ネットの世界ですね。

清治夫婦は、二年前に交通事故で一人息子を亡くしています。ちょっと暗いと、人から噂されていますが、そら当たり前やわ。事故は相手のトラックの不注意で、過密労働がマスコミで騒がれ、当事者の清治とヒナ子は、その喧騒に取り込まれてしまい、終わった時には「もう泣く事も出来へんかった」(清治)。


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06月08日(水)
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