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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ブルージャスミン」
本年度アカデミー賞主演女優賞(ケイト・ブランシェット)作品。コメディと紹介している記事がありますが、これ、どこを笑うんですか?イタイ女性の話だと思っていたら、痛々しい女性の話だったと言う。ジャスミンの滑稽さを笑うにも、長く女の人生を送っている私には切なくて無理。最近はライトなコメディが多いアレンしか知らないお若い方には、面食らうだろうシニカルな作品。女性は必見作。監督はウディ・アレン。
実業家だったハル(アレック・ボールドウィン)が詐欺容疑で逮捕され、セレブ生活から転落したジャスミン(ケイト・ブランシェット)。ニューヨークから里子同士の妹で、シングルマザーのジンジャー(サリー・ホーキンス)を頼って、サンフランシスコの質素なジンジャーのアパートまでやってきます。自立を模索する彼女は、ジンジャーの恋人チリ(ボビー・カナヴェイル)の紹介で歯科の受付の仕事をしながら、パソコンの訓練に励む毎日。そんな時パーティーで出会った外交官のドワイト(ピーター・サースガード)と恋仲になり、またセレブの世界へカムバックする事を夢見るジャスミンですが。
無一文どころか莫大な借金さえ背負っていると言うのに、シャネルの服にヴィトンのバッグ、ファーストクラスの飛行機と、まだ現実がわかっていないジャスミンの現在と、我が世の春を謳歌していた過去の彼女の回想が交互に映し出し、その回想シーンで段々と、お話の確信に近づいて行きます。
まずは服装。仕立ての上等そうな趣味の良い上品なファッションのジャスミンに対して、年齢不相応に肌を露出し、頭の悪さ全開の品のないファッションを好むジンジャー。ジンジャーの周辺のロークラスの人々に、あからさまな侮蔑感を持つジャスミンに対して、ジンジャーはこの転落で神経を病んだジャスミンに、自分が必要だと思っている。里親は愛情の注ぎ方で彼女たちを差別したのに、今尚ジンジャーの中に、ジャスミンに対する憧れと親愛が残っているのがわかります。
ジャスミンは同じような下層階級の男ばかりを選ぶジンジャーに対し、「もっと自尊心を持ちなさい」と言う。なら彼女は自尊心を持っているのか?職場の歯科医に言い寄られても、屈辱だと跳ね返しますが、それは歯科医を見下げているからだと思いました。確かにあの歯科医はセクハラまがいだったけど、彼女的には自分に見合う相手ではなかったと言うところ。
自立を目指していたはずが、社交界に復帰できそうなドワイトとの出会いで、あっけなく方向転換。彼女の言う自尊心は、虚栄心じゃないのかなぁ。ジャスミンはドワイトについた嘘を、脚色だと言う。それは自分の背景にあるもので、自分自身の中身は本物だからと。でもそれは違うと言うのは、本当は彼女が一番わかっているから、嘘をつくのですね。
ジャスミンは持ち前の華やかさと美貌、巧みな会話で優れた社交術の持ち主です。でもそれは誰かの妻である以外、存在価値が希薄なのですね。傍らに男性がいてこそ引き立つ女性なのです。反面学歴もなく、仕事のスキルもなく、慈悲深く他者を思いやる母性があるわけでもなく。そう言う自分自身には蓋をして、見て見ぬふりをしていたのだと思います。ちょうどハルが詐欺で富豪になったのを、見て見ぬふりをしていたように。
それなりに自分自身を知っていたから、夫の浮気にデーンと構えてはいられず、心が掻き乱されるのでしょう。彼女も二度目の妻であるから。美貌の衰えに怯えても、美しく年輪を重ねる術は知ろうとはしないジャスミン。やはり見て見ぬふりです。現在のシーンで情緒不安定な彼女が、安定剤や鎮痛剤、アルコールを飲む場面がいっぱい出てきますが、その時のジャスミンの目元は、必ずマスカラやアイラインで滲んでいます。
回想場面で、ハルの浮気を友人から知らされた時の彼女の目元も、アイラインが滲んでいて、はっとしました。セレブからの転落で神経を病んでいたのではなく、夫の浮気が原因で、既に心が荒んでいたのですね。そして全ての不幸は、彼女自身が招いていた事なのです。この浅はかさは、恐怖が招いた事なのです。それをまた露呈したのが、ドワイトについたすぐバレそうな嘘。
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05月18日(日)
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