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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「プリズナーズ」

子供が神隠しにあったように消えてしまった時、親はどうするか?子供にまつわるアメリカ特有の事情や、根底にキリスト教の信仰心を問う作りになっているので、些かこちらでは解りづらいですが、熱のこもったミステリーです。所々釈然としない部分もありますが、この手の猟奇的な味付けの作品には珍しく、後味の良い作品で、あまりツッコミはしたくありません。監督はドゥニ・ヴィルヌーヴ。
工務店を営むケラー(ヒュー・ジャックマン)は、妻グレイス(マリア・ベロ)と息子と娘アナの四人暮らし。感謝祭の日、近所の友人フランクリン(テレンス・ハワード)とナンシー(ヴィオラ・デイビス)の一家と共に過ごす事に。しかしアナとフランクリンの娘の二人が忽然と姿を消します。警察の捜査で、浮かび上がったのが、知的障害の青年アレックス(ポール・ダノ)。辣腕の刑事ロキ(ジェイク・ギレンホール)が捜査に当たりますが、アレックスは証拠不十分で釈放されます。
アナは六歳。少しの距離を歩くのも、ケラーは親か兄かと一緒でないと許しません。神経質なくらいです。うろ覚えなのですが、アメリカでは数多くの子供たちが、毎年神隠しにあったように消えていると言う記事を読んだ事があります。社会問題となっているそう。ケラーの注意は、その事を警戒しているのだと思いました。
アナたちが歌う歌をアレックスが口ずさんでいるのを聞いたケラーは、彼が犯人だと確信。何と今は廃屋と成り果てた自分の実家に拉致し、拷問します。この様子が凄惨で。ちょっとした猟奇もんでした。もちろん特殊メイクなんですが、ダノの顔なんて、ちょっと観ていられないくらいの腫れようです。
ケラーは一見独善的ですが、決して支配者ではなく、妻子の敬意を集め、家族からの抜群の求心力たるや、日本じゃ今や絶滅種の父親。家族は夫が父が、必ず自分たちを守ってくれると信じており、ケラーもまた、それに応えるのが自分の役目だと思っている。この思いが何としても自分が娘を探し出す=アレックスの拉致・拷問に繋がるわけですね。
フランクリンに手伝わせるも、あくまで汚れ仕事の拷問はケラー。ナンシーも拉致を知るところとなりますが、この時のナンシーの反応が怖い。自分の手を汚さず全てケラーのせいにして、娘の居所だけ知ろうとします。アレックスと一緒に地獄に落ちても、娘だけは救い出したいケラーの方が、余程人間らしさがあります。
両家とも元は善良な人々です。犯人の目的は、厚い信仰心を持っているはずの人々が、最愛の子供がいなくなれば、どうなるか?信仰心など吹っ飛ばされるはずだという目論見。俗に神も仏もあるものか、と言う言い回しがありますが、犯人もその事を体験しています。これは元々は自分たちも信仰厚かった犯人の、神への挑戦なのですね。
ミイラ化した死体、20年前行方不明になった子供、謎の迷路。あちこち張り巡らされた伏線が、次々きちんと拾われて行きます。私はミイラの謎は早い段階でわかったのですが、目くらましの人物が現れ、混沌としてきます。ミステリーとしては、秀逸な脚本だと思いました。
一方描き方の方は、アレックスが10歳程度の知能しかないと言いながら、大型の車を乗りこなすのは少し疑問だし、ロキが一人で行動し過ぎるのも謎。ラストの見せ場も、救急車や応援を呼ぶべきだと感じ、個人的には盛り上がりに欠けました。
出演者はダントツでジェイクが素敵!背景は少年院上がりだと語らせるだけですが、辣腕なだけではなく、感情の起伏や人間臭い人情とカン、冷静に事件を見つめる眼差しなど、渋くなる一歩手前の大人っぽさが漂います。狂言回し的に事件を解決して行く役なのですが、今回は主役のジャックマンを食う勢いで、まるで彼が主役みたいでした。ジェイクを初めて見たのは、まだ子供だった「シティ・スリッカーズ」だったもんで、いつまで経っても若造的に思っていましたが、もう30半ばなんですねぇ。素敵な大人の男性になったもんです。
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05月12日(月)
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