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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「小さいおうち」


名匠・山田洋次監督作品。いつもながら見事に時代を再現。美術や当時の時代の世界観など、目を見張るものがあり、丁寧に作られた作品です。しかし、どうも合点が行かない箇所の多い作品でもあり、少し残念な感想になります。

大叔母タキ(倍賞千恵子)が亡くなり、身の回りの世話をしていた大学生の健史(妻夫木聡)は、姉(夏川結衣)叔父(小林稔侍)と遺品の整理に行きます。生前タキに自叙伝を書けと勧めていた健史は、タキの遺品から完結した自叙伝を見つけます。昭和10年、東北から女中奉公に東京へ来た18歳のタキ(黒木華)。奉公先のモダンな赤い屋根の小さなおうちには、美しい奥様時子(松たか子)が、夫(片岡孝太郎)と息子恭一と住んでいました。夫はおもちゃ会社の重役で、お正月に夫の部下で美術担当の板倉(吉岡秀隆)が、おうちに訪ねてきます。頻繁に家に出入りするうちに、段々と惹かれあう時子と板倉。しかし時代は戦争に突入していきます。

えーと、まず疑問に思ったのは、タキが東京に奉公に出てきたのが18歳って、遅くないですか?その時代なら、もうお嫁に行って子供がいてもおかしくないような。そして昭和10年に18歳なら、現在96〜97歳ですよ。倍賞千恵子の風情は、どんなにおまけして見ても80前後です。最後に時子の息子の現在の姿で米倉斉加年が出演していますが、彼の方が年配に見えるってダメでしょ。倍賞千恵子を使いたかったら、別の人にしなければ。その年齢の一人暮らしなら、頻回な身内の訪問は必要ですが、直系の孫でもない姉弟が何故担当に?甥(小林稔侍)がいるのに。介護ヘルパーは?いくら生涯独身でも、この辺も謎。

そして山田組を使ってのキャスティングもおかしい。もう30半ばの妻夫木君が大学生ですか?黒木華の見合い相手は50歳で、演じるのは60代後半の笹野高史で、その叔母が松金よね子ですよ。もう年齢がめちゃくちゃ。観ている私は違和感バリバリ。使いたいなら年齢を微調整するなりなんなり、手があると思います。ここまで「組」に拘る理由は、何なのだろう?橋爪功と吉行和子の夫婦は良かったです。

で、やっと本筋の感想です。回想場面では美しい着物姿、モダンな洋装、舶来と言う言葉がぴったりな応接間など、時代の空気を満喫出来て素敵です。そしてきちんと「和」の風情も描き込み、この辺に手抜きは一切なくて大満足です。

出演者では、松たか子と黒木華が秀逸。特に松たか子は絶品。あんなに艶やかに演じるとは嬉しい誤算でした。友人(中嶋朋子)が、女学生時代に学園の華で、彼女の結婚が決まった時、自殺すると騒いだ同級生もいたと言っていましたが、それが納得の華やかさと品の良さが共存しています。育ちの良い時子は、自分のそんな魅力に無自覚だと思って見ていましたが、板倉に会いに行く時の着物を着る所作と目つきで、それは違うのだと感じました。ゾッとする程の色香が漂う。無自覚なフリをしているだけで、充分に自分の魅力を知っている人だと思いました。嵐の日のキスは確信犯ですね。黒木華も、素朴で従順、そして健気なタキを好演。一歩間違えると、愚鈍に見えたはずですが、彼女の好演のお蔭で、思慮深い女性に映っています。

そんなコケットな時子ですから、「私、この頃おかしいの」とイライラする様子は、夫婦生活が不満なのだなと思いました。夫は政治や経済に長け、仕事に精力的な人。家庭はお留守気味ですが、家族を大切に思う気持ちは伝わる人です。しかし時子は、もっと文化や芸術の香りを欲していたのでは?そこで板倉登場が、欲求不満と重なるのは理解出来ます。しかしここでまた私は違和感。垢抜けなさが純朴ではなく、もっさりした吉岡秀隆でいいのか?あんなに艶やかな時子が夢中になるとは思えない。別のキャスティングはなかったのか?例えば西島秀俊や加瀬亮とか。これは私が単に吉岡秀隆が趣味じゃないからかな?


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01月30日(木)
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