ID:10442
ケイケイの映画日記
by ケイケイ
[927605hit]

■「マリリン 7日間の恋」



ミシェル・ウィリアムズ素晴らしい!この演技で何故オスカーが取れなかったのかしら?確かにメリルも素晴らしかったけど、「サッチャー」は、メリルの力量からしたら、平均点+αくらい。しかしミシェルのマリリンは、容姿も全然違う自分のキャパにほとんどないはずの、稀代のセックスシンボルを演じて、本当にそっくり!外面がそっくりなだけではなく、マリリンの屈託のある内面を理解し、愛情を持って演じているのが手に取るようにわかり、そこにも感動しました。これぞ一世一代の名演技だと思うんだけどなぁ。映画に登場するコリン・クラークの回想録が原作で、作品的にもとても上品な出来栄えで、大変満足しました。監督はサイモン・カーティス。

世界中を虜にしているマリリン・モンロー(ミシェル・ウィリアムズ)。ローレンス・オリヴィエ(ケネス・ブラナー)が監督・出演する「王子と踊り子」に主演するため、三度目の夫アーサー・ミラー(ダグレイ・スコット)と共に、イギリスに招かれます。しかし素顔のマリリンは極度の情緒不安定で、撮影は遅々として進まず、制作側は困惑しオリヴィエは怒り心頭。助監督のコリン(エディ・レッドメイン)に、マリリン番を申し付け、彼女の行動を把握しようとします。

コリンは良家の子息ながら、本人の言うところ落ちこぼれ。しかし愛情には恵まれ、末っ子の利点を生かし、仕事は自分の好きな映画の世界へ焦点を定め、職を得るため猛烈に頑張ります。この様子は、コリンの育ちの良さから来る伸びやかさに感じられ、彼が好青年であると認識出来ます。

記者会見での当意即妙なマリリンの様子は、この作品でハリウッド映画への足がかりを掴みたいオリヴィエの心を大層満足させ、人妻であるマリリンへの邪心も膨らませるのですが、これ以降は、現場は彼女に振り回させられることに。

マリリンは気分の浮き沈みが激しく、安定剤が手放せません。大幅な遅刻はするは、セリフは覚えられない、監督の少しの言葉で傷つき全く仕事になりません。マリリンが精神病を患っていたことは、今では周知の事実ですが、当時はどうだったのかな?異常に自己評価の低い様子は、観ていてとても切ないのですが、これは相当イライラするぞ。しかし束の間、彼女が「マリリン・モンロー」になる時の輝きは眩しいほどで、全てを「なかったこと」にしてしまうのです。

天衣無縫にして天真爛漫、決して男性たちをたぶらかそうとしているわけでないのに、取り巻きの男性たちを、次々と虜にしていくマリリン。落ち込む時の捨てられた子猫のような様子も、守ってあげたくなるでしょう。それに「あのおっぱいとお尻」(プロデューサー談)。もう最強ですよ。とにかく私たちが聞いてきた「マリリン伝説」が、具体的に目の前に突き出されているのです。

彼女の病の原因は、子供の頃母と別れ(精神病院へ入院)、父はおらず、里親を転々とした事に起因しています。マリリン・モンローとしての賞賛は、ノーマ・ジーン・ベイカー(本名)が、生涯欲して止まない「愛」だと感じるのでしょう。だから彼女なりに、一生懸命マリリン・モンローになろうとする。マリリンがコリンに惹かれたのは、愛情豊かに育った青年であった事も理由の一つかも?。家庭に恵まれなかったマリリンが、ウィンザー城の人形の家に魅入る様子が切ないです。コリンに「あなたは帰る家があるの?」問う彼女。寄る辺のない身の上の彼女は、結婚にも憧れがあったでしょうが、その気質のため、結婚と離婚を繰り返します。彼女も可哀そうだし、逃げてしまう夫の気持ちにも理解出来る描き方です。

マリリンだけではなく、当時の映画界の様子も上手く挿入されており、内幕ものとしても楽しめます。撮影の風景、衣装の段取り、台本合せなど。演技の勉強をしていなかったマリリンは、当時リー・ストラスバーグに師事したこと、この作品の主役は、舞台ではオリヴィエの妻だったヴィヴィアン・リーが演じていたことなどが、さらりと挿入されていて、きちんと伝記になっているなと感じました。


[5]続きを読む

03月29日(木)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る