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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ラブ&ドラッグ」
あの真面目なエドワード・ズウィックがラブコメなんて珍しいし、主演はジェイク・ギレンホールとアン・ハサウェイと言う素敵な二人。と言う事で、公開後すぐに観てきました。前半はテンポ良くちょっとエッチなラブコメだったのが、後半はずんずん切なくピュアなメロドラマに。やっぱりズウィックは、真面目で心映えの美しい作品を作るのでした。

1990年代半ばのアメリカ。ファイザー製薬のMRのジェイミー(ジェイク・ギレンホール)は、あの手この手を駆使して営業成績を伸ばそうと必死ですが、なかなかライバル会社の製品を追い抜けません。そんな時営業先のクリニックで、若年性パーキンソン病の若い女性マギー(アン・ハサウェイ)と知り合います。尻軽プレイボーイのジェイミーは、美人の彼女にいつものように声をかけます。体だけの付き合いなら、と言う条件付きで、OKするマギー。しかし付き合いが長くなるに従い、段々マギーに惹かれるジェイミー。折しも夢の薬バイアグラが登場し、ジェイミーはぐんぐん成績を上げるのでしたが・・・。

MRさんと言うのは、私たち医療機関の受付も身近に接する方々です。その昔はこんな大層な接待があったと聞いていましたが、なるほどなぁ。にわか自立てのMRを作る様子が、とにかく派手でもぉ〜。イケイケドンドン、セールスマンをその気にさせるやり方は、扱う品が違っても、セールスの基本はみんな同じなのよね。医学知識を詰め込む辺りは、ほとんどブロイラー並み。これじゃ薬の効能を垂れてもドクターに勝てるわけはなく、金品・肉弾の接待になりますわな。今は本当にないですよ。うちの先生なんか、カレンダー貰うために書類後回しにして、結局ウェットティッシュだけだったりするもん。そうそう、ジェイミーは受付さんにも花束渡したりしていましたが、それも皆無。M製菓(薬も出してます)のMRさんは、お菓子の詰め合わせを下さるので、どこでも人気です。

勝気で美人のマギーは、まだ初期のパーキンソンなので、一見するとわかりません。彼女は、セックスを楽しむだけ、決して深入りはしないと言う条件を提示します。尻軽チャラ男のジェイミーにしたら、願ったり叶ったりの条件。速攻ベッドinします。これ以降、陽気なユーモアと若々しいエロス満開のセックスシーンがいっぱいです。偉いのはアンちゃんが何度もフルヌードでバストも見せていること。最近は男優はお尻まで見せても、女優はブラをつけていたり、ありえねーだろ的作品が多く、女性の私でも違和感があります。バストは美乳、スタイルも抜群で、彼女のヌードは見どころの一つです。

マギーがセックスだけと言うのは、自身の持病のせいで、過去の恋愛で傷ついているからです。刹那的であれ、セックスは今は健康であると言う実感は得れるものだし、やはり肌の温もりは心も温めてくれるのでしょう。明るく描いていても、彼女の心の底は見え隠れさせながら話は進みます。

段々真剣になるジェイミーに対して、及び腰のマギーが、彼を受け入れるきっかけは、同じパーキンソンの人たちの集会でした。自分よりもっと病状の重くなった人たちが、ジョークを交えながら語り、新しい事に挑戦する姿を観て、自分に正直になる決心をします。しかし皮肉にも、この集会に彼女を誘ったジェイミーが、ここで気持ちが揺らぐのです。

パーキンソン病の妻を20年介護している男性に、「先輩としてアドバイスはないですか?」と笑顔で問うジェイミー。すると彼は、「ないね。僕は後悔していないが、二度は今の人生を選ばない。歩けなくなり車椅子となり、自分の身の周りの事を全て他人任せになり、やがては認知症になり寝たきりになる。アドバイスがあるとしたら、今すぐ彼女とは別れることだ。」

この辛辣で冷静な言葉に動揺するジェイミー。軽くは考えて居なかったはずのマギーの病ですが、現実を突きつけられたわけです。同じ立場の者に励まされるマギーに対し、この描写は根治の治療が見つからない難病の辛さを強く浮き彫りにして、私は秀逸だと思いました。


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12月11日(日)
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