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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「恋の罪」
本年二度目の園子温監督作品。東電OL殺人事件は、たくさんの表現者たちの感性を刺激するようで、本作でもこの事件にインスピレーションを受けての映像化です。監督の談話に寄ると、男性目線にならないように気をつけた、と言う事ですが、前半はあまり功を奏しておらず、これは男の妄想だよと言う場面が多く、くだらないなぁと思っていました。しかし、後半は息を吹き返したように俄然盛り返してくれます。う〜ん、でもなぁ、登場人物全ての女性は理解出来るし、嫌悪感もないのですが、共感出来る女性が一人もいないのです。同じように愛が欲しく壊れてしまった女性を描く「人が人を愛することのどうしようもなさ」では、あんなに自分と置き換えて観られたのにと思っていたら、ふと気付いた事がありました。それも書いておこうと思います。
東京のラブホテル街にある、廃屋のようなアパート。猟奇的なバラバラの女性の遺体が発見されます。刑事の和子(水野美紀)が担当です。頭部が発見されず、遺体が断定出来ない中、エリート助教授美津子(冨樫真)と、作家菊池(津田寛治)の貞淑な妻いずみ(神楽坂恵)が、捜査線上に上がります。和子自身、夫と子供のいる幸せな家庭がありながら不倫しており、この事件を通じて、自分自身の心の闇と向かい合うようになります。
三人三様、自分の持つ女の性に翻弄される様子は充理解出来る理由です。いずみがあれよあれよと言う間にAVに出演させられ、自分の中で仕舞い込んでいた性の淵へと流れ着くのがあっと言う間の様子は、「冷たい熱帯魚」の社本が、村田の口車に乗って詐欺や殺人の片棒を担いでしまう様子に似ていて、とても納得出来ました。和子の場合も、冒頭あんな凄い遺体を、眉一つ顰めず検証したあと、家に帰れば食事の用意が待っている。それを淡々とこなす彼女には、浮気という非日常を作らねば、自分の精神を保てなかったのでしょう。「マイレージ、マイライフ」のアレックスと同様の理由だと思いました。一番東電OLを彷彿させる美津子は、やはりエリート稼業のストレスのせいで、と思いきや、その奥にもっと根深いものがありました。
じゃあ何が男目線だと感じたかと言うと、いずみの造形です。あんな幼稚で未熟な30前の女、いるんでしょうか?作家の夫は朝7時から夜9時まで別宅で執筆。ご飯を作ることもなく、唯一夫のためにすることは、毎朝起こして定位置にスリッパを置き、夫好みの味の紅茶を入れること。セックスはなし。これで夫を疑う事を知りません。こんなボンクラいるか?私は始め、この夫は官能的文芸作家なのに不能なんだわと思っていました。が!風呂場で「久しぶりに僕の裸を見ていきなさい」だと?あげく局部を触わっていいぞ(映画ではそのものズバリの言い方)、嬉しいか?だと?あー、気持ち悪い気持ち悪い!いずみは泣きながら「夫がピュア過ぎてついていけない」と号泣しますが、いやいやあんたの亭主は、自己愛が強くて変態なだけだよ。それを満面の笑みで触って「ハイ、嬉しいです」なんて言う30前の女、いないって。
段々と性に大胆になり、あの男この男に体を開くいずみですが、その描写がなぁ。「淫売と言え!」と言われて彼女が興奮している様子とか、夫に電話させて挿入して、悟られないように必死によがり声を我慢させるとか。正直失笑しました。和子も浮気相手から「このビッチ!下品な女だな」と言われるまま、テレフォンセックスで和子が興奮する様子が描かれます。いや東電OLだって実際の事件なんですから、そういう女性もいるんでしょう。でも二人ともって、どうよ?これじゃ女はみんなそうですよ、と言う風に受け取れます。女性がそういう言葉を吐くとき、それは相手がより興奮するからと言う「親切心」があると思います。電話のプロットはよく使われますけど、「子宮信仰」が強すぎる気が。普通の女が性に翻弄されると、みんなにマゾっ気が起きるはずはなく、女王様になる女も描いて下さいよ。
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11月13日(日)
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