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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「キッズ・オールライト」

とっても大好き!昨年から楽しみにしていて、即行観てきました。20年近く一生懸命家庭を築いてきた同性愛カップルと子供たちを軸に、普遍的な家族の絆を考えるヒューマン・コメディの秀作です。監督は自身も同性愛者だとカミングアウトしているリサ・チョロデンコ。
ニック(アネット・ベニング)とジュールス(ジュリアン・ムーア)は中年の同性愛カップル。それぞれジョニ(ミア・ワシコウスカ)とレイザー(ジョシュ・ハッチャーソン)を人工授精で産み、ママが二人とユニークだけど、幸せな家庭を築いています。しかし年頃になった子供たちは、自分たちの遺伝子上の父親を探し当て、コンタクトを取ります。その人は独身で許容力の高いチャーミングなポール(マーク・ラファロ)。”パパ”に魅かれていく子供たちに困惑するママ二人は、事態を収束すべく、ポールを自宅に招きます。
同性愛カップルの家庭なんて、本当はとても遠い存在のはず。私はストレートで子供も夫との間に三人と、至って平凡なものですが、これがもう主要人物5人に共感同感しまくり。なんて上手い脚本と演出かと唸ります。
ニックは医師で大黒柱として家計を支え、ジュールスは専業主婦的生活。しかしジュールスは養われていることに卑屈になっている。これがストレートの家庭なら、何贅沢言ってんのよ〜、幸せじゃん!となるのですが、養われている相手が同性なので、ジュールスの憂鬱が手に取るように共感出来ます。おまけにニックの産んだジョニは優等生の良い子なのに、自分の産んだレイザーは何を考えているんだかわからない。これは男女の違いなのに、そこでまた卑屈になり、ニックに当たる。この見当違いの感情も非常にリアル。しかしこの良くも悪くも、自分の心を素直に出せるジュールスの自由な感受性を、ニックは愛したのだと感じます。
対するニックは理屈っぽく威圧的ではありますが、家族を第一に考え、いつも模索しています。少々の鬱陶しさも含めて良い「旦那さん」です。しかし家庭に綻びが見え始めてから発露する感情は、まさしく女性のそれ。そう、ニックは性同一性障害の男になりたい女性ではなく、普通の女性なのですね。ただ愛の対象が同性だっただけ。私がしっかりしなきゃ、頑張らなきゃと、ストイックに自分を律していたはず。そんな彼女が好きだったのが、当時男性主導の音楽界で、悲鳴を上げつつ歌い、恋を重ねて、したたかにしなやかに生きたジョニ・ミッチェルだったなんて、思わず泣けてきました。
ジョニはそんなママ・ニックそっくり。ママ二人という環境は、世間から奇異の目で観られたはず。それを跳ね返すべく強い心と愛情を、ママたちは子供たちに注いだのでしょう。何をしても「ママたちが哀しむ」「ママたちが喜ぶ」を尺度にしてしまう。ジョニが優等生で生真面目過ぎるほどなのは、そうしないと繊細な自分を守れないからなのです。しかしママたちはそれに気づかず、自分たちの子育てが正しかったと喜びます。このお互いを思うすれ違い、どこの家庭にも転がっているはず。
レイザーの鬱屈した気持ちもすごーくわかる。だって女ばかりの家庭ですよ。自分の居場所を外へ求めるのは無理からぬこと。思考より感情が先立つのはママのジュールス譲りだしね。男性に疎いジョニが、父親と言う安心感からどんどんポールに近づいて行くのに対し、父親の理想像を持っていたレイザーが、一定の距離を保って付き合っているのは、この子はお姉ちゃんほど束縛されていなかったのだと思いました。いや、お姉ちゃんは自ら束縛されたんだけど。
重要人物のポールなんですが、ニック以外からは歓迎を受けます。そりゃそうですよね、ニックの役割は父親だったんですから。自由で気ままに生きて50近く。でも風来坊の根なし草ではなく、大人として社会への責任はきちんと果たして、気軽に付き合う若いセックスフレンドもいて、中々充実した日々です。そんな人生が彼にゆとりをもたせ、誰をも否定しないキャパの広さを感じさせる人にしています。
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05月03日(火)
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