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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ビー・デビル」

観た方の評価はイマイチなようですが、そりゃそうだわね。この作品が描いているのは、韓国人社会に深く浸透している儒教精神です。その負の部分を批判している立派な社会派作品で、大いなるフェミニズム作品でもあります。それに気づかなければ、ただのバカな女が発狂するバイオレンスものです。私はしばしば涙ぐんだし、もの凄く溜飲が下がりました。韓国では多くの女性たちが歓声を上げて、この作品を迎えたそう。過剰には描いていますが、大なり小なり未だにこのような蛮行がまかり通っている証明で、震撼しています。監督はキム・ギドクの弟子になるチャン・チョルス。今回私の実体験を交えて細かく感想を入れるので、ネタバレです。
ソウルの銀行に勤めるへウォン(チ・ソンウォン)。都会の諸々のストレスから解放されるため、幼い頃育った離島へと向かいます。笑顔で迎えてくれた幼馴染のボンナム(ソ・ヨンヒ)始め、島には9人の住人しかいません。へウォンの前では明るく振る舞うボンナムですが、島の男たちからは凌辱され、夫からは暴力を日常茶飯受け、年配の女性たちからはこき使われるだけ使われて、まるで奴隷のような扱いを受けており、一人娘だけを生き甲斐に生活していました。島から一度も出た事のないボンナムは、へウォンにソウルに連れて行って欲しいと頼みます。
夫にはDVを受け、ヤク中の弟からは凌辱され、姑にあたる伯母からは一時も休むことも許されず働きづめに働かされるボンナム。皆から罵声を浴びせられながら家事から農作業、養蜂から海女までやり、船で都会に運ぶ島の産物は、全て彼女の仕事です。なのに一円のお金も自由にならない。観ている人は、何故彼女が逃げ出さないのかわからないでしょう。ボンナムはただの愚鈍な女性ではありません。島の古い因習に見える女性の扱いは、実は根強く韓国社会に残る男尊女卑の思想を表しています。
ボンナムがへウォンに憧れるのは、都会的洗練された姿だけではなく、都会の女性は、男尊女卑の扱いから脱皮していると知っているからです。そして在日社会も、一世からの古い慣習を引きづって社会が形成されており、私が結婚した28年前は、そりゃひどいもんでした。
夫の友人の奥さんは、辛辣な言葉を浴びせ続ける姑と何とか心の繋がりを持ちたく、新婚当時自分の結婚前の貯金の100万円(10万じゃないぞ)を誕生日に渡すと、何の言葉もなし。その姑曰く、「家庭の金は自分の息子が働いたもので、例え嫁の持参金でも息子の金。何故母親の私が嫁に礼を言わねばならいないのか?」だったそう。
亡くなった私の姑は、一世の女性にしては開放的で教養があり、愛情の深い人でした。私にも優しい人でした。しかしその姑にして、「女は泣いて泣いてやっと幸せになれる。」「夫婦喧嘩の時は、例え100%夫が悪くても謝るのは妻」「何があっても実家に逃げてはいけない」と教えられました。夫が友人と会話すれば、「だれそれが嫁さんを殴ったそうや」「あの嫁さん、口が達者やからな。」「そうや、殴られるような事言う、女が悪いねん。」当時若い妻だった私が、心の中で握り拳をぷるぷるさせている姿が想像できるでしょ?
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04月18日(月)
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