ID:10442
ケイケイの映画日記
by ケイケイ
[927353hit]
■「毎日かあさん」
ご存じ西原理恵子原作の映画化で、元夫・鴨志田穣の視点で描かれた「酔いがさめたら、うちに帰ろう」と同じ出来事を、今回は妻の視点で描かれています。同じ子を持つ主婦として、共感しつつガハガハ笑いながら観ていましたが、いつしか胸がいっぱいになり、涙が止まりませんでした。「酔い〜」が元妻に対しての感謝が溢れていたにの対し、こちらは妻の夫に対しての自責の念が随所に描かれています。そして共通していたのは、相手への痛切な思いやりでした。監督は小林聖太郎。
漫画家の西原理恵子(小泉今日子)は、六歳のブンジ(矢部光祐)と四歳のフミ(小西舞優)を育てながら、毎日フル回転で奮闘中です。多忙さのあまり、高知の実家から実母(正司照枝)を呼び寄せ、手伝ってもらっています。そんな理恵子の頭痛の種は、元戦場カメラマンの夫穣(永瀬正敏)。数々の賞も取った夫ですが、戦場で見てきたことがトラウマとなり、アルコール依存症となり入退院を繰り返しています。
前半描かれるのは仕事と子育てを両立させなければならない、兼業主婦の悲喜こもごもの日常です。経験のある人は、これ私のことじゃないの?と、もう一気に感情移入するはず。この息子がバカでね〜〜。バカの描写が本当にリアルで感心します。微妙な差こそあれ、私にも心当たりがいっぱいでね。昨日も二男と三男と話をしていたら、「子供の頃、ウ○コ、チ○コという言葉を聞くだけで、死ぬほど楽しかった」と言うのです。こんなもんが神の言葉だったわけですな。もう本当にバーカバーカバーカ!
私は女の子を育てたことがないので、娘はどうかはわかりませんが、三人息子を育てて「息子はバカだ」とはきっぱり言い切れます。子育てし始めの頃は、何でうちの息子たちはこんなにバカなのか?と不思議でしたが、三番目もバカだったので、要するに「男の子はみんなバカ」なんだと悟るわけ。そうするとバカの大元・夫だって、何故いつまでも「バカ」なのかが、理解出来てくるわけです。
褒めて育てるが子育ての理想なんで、どの母親だってそれは心掛けてはいるもんですが、何しろ怒られることしかしない。まず一呼吸おけばいいものの、自分も余裕がないので、まず怒鳴る。そして自己嫌悪。反省するも次の日になったら綺麗さっぱり忘れてしまって、また毎日の繰り返し。そんな未熟で至らない、でも無我夢中の母親の日々が、逞しく描かれています。保育園のお母さん友達と、子連れでor子なしで集まり憂さ晴らし、そして夕方になればお開きの、時間に縛られつつ楽しみを見つける日々も、懐かしい思いで観ました。
「酔い〜」の夫が、同じ憎めぬダメ夫であっても、淡白で飄々としていたのに対して、こちらの夫は生々しく「男」でした。息子に父親として、男の処世術も教えてやれるのです。描かれるのが離婚後であったからでしょうが、一切元夫への憎しみを見せない「酔い〜」に対して、こちらの妻は愛憎がてんこ盛り。夫へ毒の籠った辛辣な言葉も連発します。気に入らなきゃシバいたりもする。そりゃ当たり前ですよ。家計の全部は妻の負担、それに家事も子育てもなのですから。元夫の描く妻は菩薩にも似た人だったのに、著者が自分をも客観的に辛辣に観察しているのがわかります。
こりゃ私だって離婚したくなるわと、心底同情したのが、夫の失禁や勝手に犬を買ってきたり、あちこち散らかしまわる描写です。子供がいる方はわかるでしょうが、子供が小さい時は、毎日毎日水やジュースを床にこぼす、トイレをびちゃびちゃにする、あげくゲロ吐き。もう拭き掃除や片付けとの格闘なわけです。私はこれが辛くて、若いころ泣いたことがあります。それの上を行く夫がいたら、堪りません。友人(柴田理恵)が、「よその旦那さんなら笑えるんだけどねぇ」と言いますが、正にこれは真理で、他人には喜劇でも、本人にとっては、とても辛い悲劇です。
[5]続きを読む
02月06日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る