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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「アリス・イン・ワンダーランド」(3D 吹替え版)


本当は2D字幕版で観たかったけど、私の愛する布施ラインシネマがいよいよ3D上映を設置。そのこけら落とし上映作がこの作品のため、ご祝儀を兼ねて3D鑑賞しました。が!これ本当にティム・バートン?と、今までそれなりに彼の作品を愛してきた者からしたら、首を傾げる内容で、全体的にただただ平たんに進む大味な内容に、だいぶ落胆しました。正直言って退屈でした。

19歳になったアリス(ミア・ワシコウスカ)は、幼い時のワンダーランドでの体験をすっかり忘れていました。園遊会に母といっしょに招かれたアリスは、思いもよらぬ相手からプロポーズされ困惑。返事まで時間が欲しいと逃げ出してしまいます。そこで白うさぎを観た彼女は追い掛けていき、落とし穴に落ちてしまいます。そこは非情な赤の女王(ヘレナ・ボナム・カーター)が支配するアンダーランド。かつてのワンダーランドです。白うさぎやチェシャ猫、そしてマッド・ハッター(ジョニー・デップ)は、アリスこそこの国を救う救世主だと言います。政権を赤の女王の妹である白の女王(アン・ハサウェイ)に手渡すために、アリスは奮闘することに。

まずは良いところから。美術は確かに色彩豊かで見応えはありました。お茶会のシーンなどは、ティーポットやカップのひとつひとつまで凝っており、中々素敵。しかしパッと観て、「ハリポタ」シリーズと大差はありません。監督がクリス・コロンバスだと言われれば、そう信じちゃう。個人的にはバートンの哀愁のある毒気みたいな、そういう世界観は感じませんでした。致命的なのは、3Dにする必要が全く感じられなかった事。飛び出す画面がいちいちうざったいです。

幼い頃の想像力豊かな感受性の強さを持ったまま大人になりかけのアリスは、現在ちょっと不思議ちゃん扱いで、世間からは浮いています。そんな自分と世間の隔たりに戸惑っている途中に、ワンダーランドへ戻ってしまいます。しかし昔の事を忘れたアリスは、住人たちからは「あのアリスじゃない!」と言われる始末。子供にも戻れず、さりとて分別のある大人にもなれず。どこにも身の置き所のない侘びしさを感じていいはずなのに、アリスからはその困惑や焦燥感が、まるで伝わりません。

お話はその後、段々と昔を思い出し勇気と豊かな感受性を武器に、アリスが「あのアリス」に戻り、暗黒のアンダーランドから、夢と希望のワンダーランドを取り戻そうとします。全くの予定調和。その間間にさすがはジョニデ!という感じで、デップが場面をかっさらってくれますが、それ以外はグロテスクさもロマンチックさも中途半端で、どっちつかずです。

決定的に私が疑問に感じたのは、赤の女王の扱いです。醜い容姿に生まれつき、美しく優しい妹に両親の愛情まで奪われ、心まで醜くなった彼女。本当は愛されたかったのに、誰からも愛してもらえず、「私はやっぱり愛されるより、恐れられる方がいいわ!」というセリフの痛ましさよ。この異形の哀しき女王に、何故最後まで一切の魂の救済がないの?

バートンと言えば、自他共に認めるオタク監督で、理解されぬ異形の人々への、温かい哀歓に満ちた眼差しが真骨頂の人なわけです。多くの私を含む映画好きは、まさにその部分で彼を愛しているんです。それがどうした?何この展開は?と沸々怒りさえ湧いてきた時、ふと思い当りました。

この作品はディズニー制作で、きっとプロデューサーから、あれこれ注文でたんですな。なので面白くも何ともない勧善懲悪のストーリーになったと想像しました。

完璧な容姿と人柄のはずの白の女王のキャラなんですが、鼻に就く過剰なエレガントさ、魔法の薬を作る時の打って変ったビッチさ、極めつけは「私は何も殺さないの」と言いながら、他の者があれこれ殺戮したって、それは構わないという狡猾さ。うーむ、赤の女王を救済出来なかった分、こちらで溜飲を下げたというわけかな?それにしても、一般的にはわかりにくいですね。



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04月21日(水)
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