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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「レッドクリフ Part II ―未来への最終決戦」
うんうん、満足!パート1のような派手な活劇場面は、終盤近くにぎゅっと凝縮。それ以外は丹念な、とまでは行きませんが、そこそこな心理描写もわかり易く、主なキャストそれぞれに華を持たせる場面もきちんと作ってあり、有名な逸話の挿入場面も抜かりなし。大作にありがちな大味感は多少付きまといますが、それも許容範囲かと。私はとっても楽しめました。すんません、今回あらすじはカット。
まずは孫権(チャン・チェン)の妹尚香(ヴィッキー・チャオ)が、敵方の曹操の軍の兵隊に化けて、間者として潜入しているので、びっくり。(昨日「PartT」の放送があって観ていたら、ちゃんと前振りがありました)どうやって潜入出来たのか、年食ってもヴィッキー・チャオだぞ、別嬪さんだぞ、何故ばれない?というのはさておき、彼女のスパイぶりと絡めて、一兵士との心の交流を描くのが好ましい。相手は身分を隠しているとはいえ、敵方の将の妹です。このことで「戦」とは、将の思惑や権力欲、憎しみが元であって、下級の兵士たちは、ただ命令に従っているだけなのだと、今さらながらに思うのです。俺はバカで大飯ぐらいのごく潰しだと語る彼。この戦で活躍すれば、貧乏な家族の助けになるのだと語る姿に、今も昔も、戦争に駆り出される兵士の層というのは同じなのだと、しんみりしてしまいます。
劉備×孫権の連合軍にも、今回色々ありまして、その直属の周瑜(トニー・レオン)と孔明(金城武)の間にも緊張感が走り、お互いの命を賭けた「賭け」をします。有名な逸話を描きながらの、腹の探り合いや信頼感、果ては曹操の傍若無人ぶりや孤独も浮かび上がらせるなど、心理的な描写が冴えます。
軍で勝る曹操、知恵で勝る連合軍の様子を描きながら、静かで巧みな展開を見せ続けた後、ドカーン!とラスト近くの戦場場面は、大変見応えがありました。前作のようにアクション映画さながら、小出しにクリーンヒットを出す見せ方ではなく、最後に出た満塁ホームランのような描き方で、流麗さより重厚さを重視し、時間もたっぷりとってありました。CGも多少は使っていたのでしょうが、ほとんど人海戦術だったと思います。その辺の重量感も、香港・中国・台湾と、中華系の威信にかけて作った意気込みが感じられました。
「戦に勝者などいない」と語らせたのは、昨今の戦争映画の流れでしょう。尚香と一兵士の交流、「夫のためではない、民のために来た」と語る小喬(リン・チーリン)の様子、身の危険を顧みず、優秀な父や兄に比較され、うっ屈した思いを抱く兄孫権のためにと頑張った尚香を描く事で、大味で終わりがちな歴史大作に、現代的な味付けと深みが加わったと感じました。

で、前作で「女がいなくても、素敵に観える」ということを、初めて立証した金城クンなのでありますが、今回もやればできるじゃん!の好演。やる気がないだの、棒読みの大根だなど、心無いけど的を射た評価が定番の彼ですが、孔明というのは中国四千年の中でも飛び切りのインテリな訳ですよ。なので暑苦しい熱演なんかされちゃー、台無しなのです。前回の飄々とした文化人ぶりに、今回は泰然自若の風情まで感じさせ、扇を振る姿もすこぶるエレガント。この作品、必ず金城武の代表作になるでしょう。って、彼のファン以外は誰も言わないのが謎。

しかし!個人的男の趣味を除けば、今回一番渋くて光っていたのは、曹操を演じたチャン・フォンイーでしょう。死者を冒とくするような行為、暴君で部下の注進を聞かず、簡単に首をはねるかと思えば、巧みな言葉の誘導で、死を目前にした兵士をも武器を持たずにおれなくさせる、人たらしぶり。中国史上、名うての敵役のはずが、この作品イチのカリスマぶりです。裸の王様ぶりや、小嬌への恋心などのスキの見せ方も上手く、結構萌えた女子も多いのでは?演じるフォンイーは、あの「覇王別姫」でレスリー・チャンの相手役で有名な人です。今回10年ぶりの映画出演ですが、見事に期待に応えた演技でした。
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04月13日(月)
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