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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「誰も守ってくれない」

延び延びになっていたのを、やっと鑑賞。詰めの甘い箇所も多々ありますが、一番芯になる「加害者家族の人権」を考えるという視点は最後まで真摯で、その姿勢に感銘を受けました。監督は君塚良一。
中学三年生の船村沙織(志田未来)は、ある日突然高校生の兄が、幼い姉妹を殺害したとして、警察に連行されます。何が何かわからぬまま、沙織は両親と離れ、マスコミや市民のバッシングから守るという名目で、警察に保護されます。しかし執拗に追いかけてくるマスコミ。本当は休暇を貰えるはずであった刑事の勝浦(佐藤浩市)は、上からの指示がないまま、一人で沙織を保護することになります。
導入場面が秀逸。観客はこれから沙織の身の上に起こり得ることがわかっているので、屈託なく学校生活を送る彼女の笑顔に心が痛みます。予告編で聞かされていたオリジナルの主題歌も効果的に使われています。
兄の逮捕から連行、それ以降の一連の警察の家族に対しての対応、マスコミの動向は、ちょっとドキュメントを観ているようで、臨場感大。執拗に船村家を追いかけるマスコミには、私自身はこういうことに興味がないので、これをリアルだと感心する前に、腹が立ちました。但し一転、家の中の家族に対する警察の対応は、だいぶ誇張というか、デフォルメされている感は否めず。
離婚・入籍の件や就学免除の件など、これはもっと時間が経ってからはあるかも知れませんが、逮捕当日とは、幾らなんでも早すぎだし、弁護士も来るなど用意周到過ぎです。就学免除などは学校側の意見も加味されるはずだし、第一本人(沙織)が通いたいと言っているのに、それを全く無視する「権利」など、警察にあろうはずがありません。のちに兄の証言が取れなくて困るという流れなんですから、罪を認める段階でも無いうちからは、この一連の流れはやりすぎです。この辺には疑問が残りました。
マスコミがあの手この手で沙織を追いかけ回すのは、納得したりしなかったり。未成年加害者本人の写真が出回るのは、今までにも実際あったことですが、その家族の姿など、私はどこにも観た記憶がありません。過去にある捜査ミスで、罪のない子供を死なせた勝浦にしても、その事が三流週刊誌ならともかく、新聞に以前の失態が名前付きで暴露されることなど考えられず、これも暴走気味の演出です。
ネットで炎上する事件。ネットの匿名性の恐ろしさも描いています。私が足繁く通うサイトは、映画のお友達サイトと自分の仕事関係、mixiくらいなので、これが本当なのかどうかはわかりません。しかし無責任で興味本位な行動は慎みたいと思わせるには、充分でした。というか、BFの件は、私的には痛々しすぎて、私は好きではありません。あれより中学生くらいなら同性の親友もいるでしょうし、その子を電話にでも出させる演出もあった方が、より現実的だったかと思います。警察批判的要素見受けられますが、これも要らないと思います。
しかし私がそれでもギリギリセーフかなと思えたのは、何が何だかわからず、狼狽しつつ必死で耐える沙織、やっかいな者をしょい込んだと思いつつ、沙織への相哀れむ心を見え隠れさせる勝浦など、志田未来と佐藤浩市の演技が本当に上手だったから。映画は映画なんですから、リアリティ一辺倒でなくてもいいですよね。
その死なせた子供の両親(柳場敏郎・石田ゆり子)が営むペンションへ、勝浦が沙織を匿う目的で訪れる後半からは、本来のテーマが強く浮き彫りにされます。勝浦は毎年両親を訪れ、仏壇に手を合わしているようです。本当の加害者は薬物中毒者で、勝浦ではありません。しかし本来ならお互い顔を合わすのが気まずい間柄でしょう。
特に父親など、勝浦に辛く当たるのは大人の配慮としては出来ないでしょう。気まずくても来ることで詫びの気持ちや誠意を表わせる勝浦の方が、気が楽なのではないでしょうか?「加害者の遺族も被害者の遺族も、大変なのは同じかも知れませんね」と語る、その温厚で聡明な父親が、とあることで感情を爆発させ勝浦に迫る場面が秀逸。この場面があることで、この作品の値打ちが倍も三倍も違います。
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02月15日(日)
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