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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「WALL・E/ウォーリー」(吹き替え版)


信頼できる映画友達の方から、絶対大人は字幕版!と、ご助言いただいておりましたが、なんせ新しい職場でまだ3週間足らず、いっぱいいっぱいの身には、電車で20分のなんばTOHOも遠いのよ。しかしこの作品は何としても観たく、吹き替え版のみの近場のラインシネマをチョイス。なので、めでたさも中くらいかな?と予想していましたが、しっかり思い切り感動して参りました。精神年齢が低くて良かった・・・。監督は「ファインディング・ニモ」などのアンデリュー・スタントン。

誰もいなくなった地球に、置いてけぼりになったゴミ処理ロボットのウォーリー。実に700年間、毎日毎日廃墟と化した地球で、たった独り仕事に励んでいます。そんなある日、飛行船から現れたのが新型ロボットのイヴ。彼女に一目惚れしたウォーリーは、なんとか彼女の気を引こうとしますが、イヴはある使命を帯びて、地球にやってきたのでした。

出だしからロボット二体の出会いと交流の描き方が、秀逸です。一生懸命ごみ処理をするウォーリーからは、生き生きとした楽しさが感じられるのですが、画面を引くと、そこは廃墟と化したアメリカが映し出されるのです。広大な荒れ果てた地でたった一体のウォーリー。人工知能を持っているのでしょう、自分の住まいを作り、ゴミの山から好みの宝物を探し、いそいそ持って帰る様子が健気で切ないです。それは彼の見つけた孤独を癒す方法なのでしょう。何百年も前のはずのお気に入りのビデオ「ハロー・ドーリー」を繰り返し見ながら、手を繋ぐシーンに憧れるウォーリー。自分の手を組みながら画面を食い入るように観る彼に、ほとんどロボットだとは忘れそうです。

そんなウォーリーの前に突然現れた流麗なフォルムの新型ロボットのイヴ。、これが「T3」の近代型ロボット、クリスタナ・ローケン真っ青の破壊力を持っています。内気で優しく不器用なウィリーと、別嬪さんだけど気が強くてすぐに手が出るイヴの交流は、ほとんど会話がありません。ボディランゲージだけなのですが、これがロボットなのかというほど、二体の動きと表情は、セリフ以上に豊かに彼らの「心」を語ります。この辺は常にCGに血の通った温もりを感じさせる、ピクサーアニメの真骨頂というところでしょうか?

ウォーリーが初恋のイヴを追って以降のお話は、私は全然予備知識がなかったので、すごく考えさせられました。ごみ処理していたウォーリーが汚染物資扱いなのは、現代の狂信的な清潔神話めいた風潮を揶揄しているように思えます。人間が何百年かけて助々にロボットに世話してもらう部分を増やしていくと、ああいう姿になるのも納得です。思考能力から感受性まで、全て退化しているのがわかります。怒るという概念もないみたい。身体を使うという事がいかに大切かが伺い知れます。

人工知能に支配される様子は、とあるSF映画を彷彿させます。そしてその映画に印象的に使われた音楽も使われますが、それを踏まえて、この作品ではとってもブラックな味付けです。本来は人間の進化を表す場面ですが、自分たちに都合よく便利よくを追求すると、人間は進化ではなく退化するのだと言う皮肉が込められています。

宇宙船の艦長が叫ぶ「生き抜きたいのじゃ無い、生きたいんだ!」というセリフは、生きている実感が欲しいと目覚めた言葉で、とても印象的です。それを気付かせたのが、他ならぬ人口知能を持ったウォーリーやイヴなのですから、ここには未来に向けて、ロボットと人間の共存を望んでいるのを感じました。

今は廃館になりましたが、大阪にパナソニックスクエアというところがありまして、人工知能を持ったロボットが人気でした。小学生だった息子たちが楽しげに「彼」と会話した後、私も彼とお話することに。名前と住所を聞かれ答えると、「あれ?今聞いた名前だよ。○○くん(息子の名前)のお母さん?」と尋ねるではありませんか。「賢いねぇ!」と、思わず私が褒めると、「それほどでも・・・」と照れるではありませんか。一瞬心が通ったように感じたのは、錯覚だったのでしょうか?


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12月18日(木)
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