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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「おくりびと」


昨日のレディースデーに観てきました。モントリオール映画祭でグランプリ受賞で前評判もすごく高いので、万が一があってはならずと、仕事帰りにラインシネマでチケットを予約して、一旦帰宅。その後劇場に向かいましたが、予感的中。超満員で(客席100ほどですが)立ち見の出る大盛況でした。最近ラインシネマにたくさんお客さんが入って、本当〜〜〜〜に嬉しい!八尾にMOVIXが出来て以来、目に見えて観客が減っていたので、私が映画的産湯を浸かったようなこの劇場のこと(正確にいうと前身ですが)、すごく心配していました。劇場側のサービス向上や努力も感じられ、それが実を結んだのですね。でも一番は良い作品を提供することです。この作品も少しひっかるところはありますが、泣けて笑えて心に染みて、そしてとてもわかりやすい、上質の作品でした。監督は「陰陽師」などの滝田洋二郎。

チェロ奏者の大悟(本木雅弘)は、所属していた楽団の解散で、妻美香(広末涼子)と共に故郷の山形へ帰ってきます。チェロ奏者の道をあきらめた大悟は、新聞の求人チラシで見つけた会社へ面接に行きます。そこは死体を納棺する会社で、戸惑う大悟をしり目に、社長の佐々木(山崎努)は半ば強引に採用していしまいます。妻には言い出せぬまま、冠婚葬祭の会社と偽り、大悟の「納棺師」としての毎日がスタートします。

親を三人見送りながら、恥ずかしながら納棺師という仕事を知りませんでした。葬儀屋さんの仕事だと思っていました。実母・舅姑は病院で亡くなったので、看護師さんの手で、いわゆるエンゼルケアをして頂きました。なので湯灌というのは、この作品で初めて観ました。

冒頭粛々と進められる湯灌の儀を、こちらも居住まい正して観ていると、思いがけなく、声を出して笑ってしまう展開に。こうやってずっと、人の死という重たい題材を扱いながら、肩の力を抜いて、その尊厳について考えられるように作ってあります。そう言えば一族郎党集まる通夜や葬式は、泣くだけではなく、昔話に花が咲いたり笑ったり、結構賑やかなものですよね。

たくさんの納棺のシーンが出てきて、誰が死んだかによって、当たり前ですが周りの空気が全然違います。やはり孫がいるような年齢になってから亡くなる方が、なごやかな空気が漂います。それなりに長生きすることは、意味があるよなぁと感じます。

私が印象深かったのは、山田辰夫演じる男性の妻が亡くなった時の納棺です。妻は私くらいの年齢でしょうか?妻を亡くしたやり切れなさを、大悟たちにぶつける夫。しかし口紅がきっかけとなり、その思いは自分自身にぶつけるべきものだと悟ったのでしょう。もっと大切にすれば良かったとの悔恨の思いが湧いたのでしょうね。それが「今までで一番綺麗な顔だ」という、心からの感謝の言葉で表われています。他は奥さんや愛人(多分)、女の子の孫から、キスまみれにされていたお爺ちゃんの遺体が微笑ましかったです。私の想像通り愛人なら、妻といっしょに送ってもらえるなんて、すごい甲斐性だわ。

そうと言ってもやはり納棺。各々の場面で、何度か涙が止まりませんでした。場内は女性を中心に年齢層が高く、私のように身近な身内を亡くした人も多いのでしょう。当時の記憶が鮮やかに蘇りました。

段々仕事にやり甲斐を感じ始めた大悟に向かって、幼馴染み山下(杉本哲太)の心ない言葉や、予告編にも出てきた妻の無理解や「汚らわしい」の言葉が、大悟を悩まします。この辺の納棺師への偏見の強さに、ちょっと疑問が湧きます。若い美香はともかく、山下は父も見送り、葬儀の際の葬儀屋さんや納棺師の有り難さは身に染みているはず。それが町で出会った妻子に、「挨拶するな!」はないでしょう。のちのちの展開の伏線になっているのはわかりますが、この他にも訳ありの余貴美子扮する事務員女性の唐突な告白や、美香が納棺師の仕事を初めて理解する件など、ちょっと持って行き方が強引です。普通ならあの場に美香は同席させてはもらえないはず。私なら一度会ったか会わない人が、ああいう極々プライベートな場にいられたらいやです。


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09月18日(木)
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