ID:10442
ケイケイの映画日記
by ケイケイ
[928334hit]

■「夜顔」


1/31に、「やわらかい手」とはしごして観ました。「やわらかい手」終了後、梅田ガーデンシネマからテアトル梅田まで、制限時間は15分少し。大阪在住の方はおわかりでしょう。そう、走ったんです。現在期間限定門限午後4時のため、劇場通いの時間捻出に四苦八苦している所へ、この公開ラッシュでしょう?本当、大変なんですよ。頑張れ、私!いや息子か・・・(全然勉強しとらんが)。この作品は、今年めでたく100歳を迎える現役最長老監督、ポルトガルのマノエル・ド・オリヴェイラが、ルイス・ブニュエル監督の「昼顔」のその後を描くということで、すごく楽しみにしていました。しかし面白かったか?というと、超微妙な感覚が残ります。でも格調高かったし、見どころはたくさんあったので、やっぱり観て良かったです。

老紳士アンリ(ミシェル・ピコリ)は、クラシックのコンサートで、昔の友人の妻を見つけます。彼女の名はセヴリーヌ(ビュル・オジエ)。セヴリーヌを追いかけるアンリですが、自分の過去の「ある出来事」を知るアンリとは会いたくない彼女は、逃げ去ります。色々手を尽くしてセヴリーヌと会食の約束を取り付けるアンリ。そこで交わした会話は・・・。

予告編で最大の謎だったのは、アンリは前作と同じくピコリなのに、何故セヴリーヌはカトリーヌ・ドヌーヴから、オジエに交代したか?でした。テアトルで数度予告編を観て、監督はきっとすっかり老成したセヴリーヌを表現したいのだ。今だゴージャスに現役の女感を振りまくドヌーヴじゃ、しっくりいかないと判断したのかも?などなど色々想像していました。鑑賞後の個人的な感想としては、それは当たっていたし、それが超微妙な感想の元でもありました。

アンリは老いたりとは言え、一人でバーへ、それも初めての店で若いバーテン相手に、お洒落で含蓄のある会話を楽しめる人です。店を根城にする二人の老若の娼婦が彼を誘いますが、「彼女たちは天使だよ」とお酒を御馳走しますが、買うことはしません。若いバーテンも、年寄りの戯言に付き合うと言う感じはなく、アンリとの会話を楽しんでいます。この恰幅の良さや余裕は、男としてのは高い経験値がモノを言い、若い男じゃ出せない艶です。あぁなんて素敵。特にカッコいいのが、チップの使い方です。自分を高く印象付ける初めての店での不足のない額のチップ、セヴリーヌの居場所を突き止めるための、フロント係に渡すチップ。ピンポイントを押さえたお金の使い方は、あちこちお金をばらまく、そこいらの成金とは一味も二味も違います。

一つ間違えばストーカーのようなセヴリーヌへの執着ぶりですが、前作でもアンリはセヴリーヌから嫌われていましたが、彼女を追いかけまわしていましたから、合点はいきます。それよりもその感情が、老人となった今も続いている方が驚異的。枯れもせず渋くもならず、ひたすら戻った恋しい人を追いかける様子が色っぽくて、現役の男だと感じさせ、下品ないやらしさは皆無です。

何とかセヴリーヌと会食の席を設けるアンリ。そのレストランはケバケバしさがなく、調度品やサービスなど素晴らしく、相当格式高いところだとわかります。いくら恋しい人とは言え、老女相手にこんなにお金使って、フランスの男は違うわ(うっとり)。しかし対するセヴリーヌがですね・・・。

オジエは70歳前の人で、スタイルもよくブランド品のスーツを美しく着こなし、ヒールのあるパンプスを履いて、こちらも素敵なんですが、如何せん「可愛いお婆ちゃん」に見えてしまいます。なので、倒錯した性癖を持ち、「昼顔」として娼館に勤めていた過去を悔い、「修道院に入りたい」という現在の姿はとても納得出来ます。


[5]続きを読む

02月06日(水)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る