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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「モーテル」

怖かった!面白かった!終映近くの13日に観てきました。この手のホラーは好きなのですが、電車に乗って出かける劇場でしか上映せず忘れていたら、いつもお世話になっているFさんから、協力プッシュが。それではと「椿三十郎」から変更しました。仲たがいした夫婦の再生ものとしても秀逸で、90分足らずをきちんと作り込んだ秀作でした。
離婚寸前のデビット(ルーク・ウィルソン)とエイミ(ケイト・ベッキンセイル)ー夫婦は、エイミーの両親の結婚記念日の祝いからの帰途、夜半に道に迷い、あげく車はエンコ。仕方なく一軒のモーテルで一泊するはめになります。薄汚い部屋に閉口した二人は、気晴らしにビデオでも観ることにしますが、そのビデオは、彼らが泊まった一室で起こった殺人ビデオでした。
と、とってもシンプルな題材です。オープングから派手さはないですが、タイトなサスペンス調全開で、なるほどこれは面白いかも?と期待いっぱいに。
道中の夫婦の不穏な会話と、エイミーの終始不機嫌な様子から、かなり険悪なのがわかります。大げんかするわけではありませんが、お互いのうんざりする様子が手に取るように伝わり、会話の描写が上手です。パラっと一枚、夫婦と坊やが写った写真が落ちてきて、涙するエイミー。子供が亡くなっているのですね。ほんの数十秒の描写が、この夫婦の険悪さの原因を雄弁に語り、秀逸な描写です。そして子どもが亡くなったという事実が、この作品にとても深みを与えるのです。
さぁこのモーテルから夫婦は脱出出来るか?というお決まりの展開ですが、それがとってもスピーディでドキドキさせ、見応えがあります。犯人は小見出に二人を怖がらせ精神的にいたぶりますが、それはその様子をビデオテープに撮るためなのです。その小見出に、何度背筋が冷っとなったことか。決して大げさな恐怖ではなく、怖っ!がいっぱいあるのです。猟奇的な場面は、画面からは小さく見えるビデオテープの中に収めているだけです。実際の二人に体験させるのは、ねずみやごきぶり、真っ茶色の水道水など、生理的な不潔感を煽りますが、流血は最後の最後までありません。モーテルの支配人の、胡散臭く生理的にいや〜な人を感じさせるところも良かったです。下手に血を大量投下すると、凡百のスプラッタムービーとなるところを、救っています。
でも一番怖いのは殺人の動機です。「13日の金曜日」のような都市伝説的なものでもなく、「悪魔のいけにえ」のような精神異常者でもありません。ある出来事から何故犯人が殺人を犯すのかがわかりますが、それこそ世界各国、ひなびた町に泊まった日にゃ、どこでも起こり得る理由なのです。不条理なホラーを絵空事と思って楽しむのと違い、病んだ刺激を求め続ける、決して画面には出てこない人の心は、本当に恐ろしい。
後は離婚届けに判を押すだけだったはずの二人ですが、ずっと仏頂面であったエイミーは一心に夫にすがり、妻にうんざりしていたデビッドは懸命に妻を守ろうとします。隙を見て助けを呼ぼうとしてデビットですが、末遂に終わり命からがら、部屋に戻ります。その時泣きながら夫の無事を確かめ抱きつきキスするエイミー。このシーンで思わずホロっと涙が出ました。
私は車のシーンで、夜を徹して運転する夫を気遣い、「運転を代わるわ」と何度も言うエイミーを観て、本心はまだ夫に未練があるのだと感じました。ただの社交辞令など言っても意味がないほどの溝が、二人にはあったはずです。それなのに夫の体調を気遣うのは、彼女の本心なのです。デビッドにも欝病の妻を気遣う言葉が数々ありました。微妙な空気から、私はずっと修復可能な夫婦だと思っていました。
「僕は息子のことを忘れたくない。もっと話がしたいんだ」というデビッド。母親のエイミーはまだまだそんな境地にはなれなかったでしょう。名前を聞く度顔が浮かぶ度、涙が出るのは当たり前です。そんな自分の心もわからない夫に、いやけが差すのはよくわかります。誠実で温厚だと思っていた夫は、鈍感で頼りない人に妻には変化したのでしょう。
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12月14日(金)
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