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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「サラバンド」
この作品は前回の「ある結婚の風景」は、この作品の続編ということで観ました。私は早くに結婚したせいか、同年代の方々が若い頃観たであろうベルイマンの数々の作品にも縁がなく、現在に至ります。テレビで「秋のソナタ」「沈黙」(多分カットだらけ)、スクリーンで数年前に「叫びとささやき」の三本のみ。「叫びとささやき」は念願のスクリーン鑑賞だったのですが、あまりのすごさに打ちのめされ、帰ってから夕食を作るのがいやになり、本当に大変な思いをしました。そんな経験から2本も観る今回は仕事休みを選び、朝から夕食の支度までやって、いざ朝10時に出陣。

しかし「ある結婚の風景」は大変手応えのある作品ながら疲れも充実したもので、お腹がすくすく。しっかりお昼御飯を食べた後2時半からの鑑賞で、「サラバンド」の方も思ったほど重苦しくなく、ベルイマンの女性への素直な敬意は意外なほどで、これは成熟なのか老いなのか?ベルイマンを知らない私にはわかりませんが、難解な作品ではないと思いました。

弁護士のマリアン(リブ・ウルマン)はある望みがありました。30年前離婚したヨハン(エルランド・ヨセフソン)に会うこと。今は親の遺産が入り隠居生活をしている彼を訪ねることにします。ヨハンにはマリアンとの結婚以前に出来た息子ヘンリック(ボリエ・アールステット)とその娘カーリン(ユーリア・ダスヴェニウス)が近くに住んでいます。ヨハンとヘンリックはお互い憎しみあい、ヘンリックはカーリンを音楽学校へ入れようと、厳しい練習を科していますが、カーリンは母を亡くしたあと、自分を盲愛する父に辟易しています。。滞在するうち、そんな家族の愛憎の渦に、マリアンも巻き込まれてしまいます。

続編と聞いていましたが、完全な続編ではありませんでした。ヨセフソンとウルマンが夫婦役なのはいっしょですが、前回は年齢差が7歳でしたが、今回ヨハンは80代半ば、マリアンヌはマリアンとなり63歳です。そして二人の結婚の前に既に結婚歴があるのはマリアンの方でしたが、今回はヨハンにマリアンと年の変わらぬ息子がいるということは、マリアンヌ以前の結婚相手との子でしょう。そして離婚時の年齢も違い、完全な続編と思い込んでいたので、てっきり「不倫旅行」からどうなったのか?と思っていた私は、少々戸惑いました。キャストとモチーフだけがいっしょというわけです。

日帰りで帰るはずだったマリアンは思いの外長く滞在し、老いた元夫婦は、男は厭味を含めた軽口を叩き、女は少々うんざりしながらもそれを受け止め聞き流し、まるで長年ずっと夫婦だったようです。まるで戦場だったこの夫婦のケンカを観た後だったので、この穏やかな時の流れは、歳月は全てを洗い流すとは本当だなと感じました。

しかしその代わり、父と息子、父と娘の愛憎がもの凄いです。特にヨハンとヘンリックの諍いは50年に渡り、立つこと歩くことも辛そうな老人の息子への憎しみが、思春期に自分に反抗する息子の言葉だというのが、またすごい。後述で自分に似ている息子がいやだという、根底には近親憎悪があるのですが、それにしても、経済的困窮を訴える息子に投げ返す言葉の、あまりの冷たさに愕然とします。

ヨハンのあまりの偏屈さと器量の狭さに、これが離婚の原因かなと思う私。マリアンはそれをいさめる風でもなく、穏やかに受け止めます。それは自分が直接関与したことではないからとも思えますが、ヘンリックやカーリンに自ら関わろうとする姿を観ていると、そこにはヨハンを憂いての気持ちがあったのでは?と感じます。昔のマリアンには、こういう芸当は出来なかったはず。男が一向に成長せず更に粘着質になっているのに対し、女の方は離婚を糧に成長している様子を描いていたと感じました。


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01月21日(日)
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