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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「愛の流刑地」
私の天敵の、愛欲に狂う子持ち女が、間男に殺されるお話。でもね、「ハッピーエンド」とか、「運命の女」とか、好きな作品もあるんですよ。原作は渡辺淳一の情痴小説です。この手は「失楽園」は元より、「ひとひらの雪」「化身」など、もうええって、というほど映画化されており、最初はパスのつもりでした。しかし監督が鶴橋康夫と聞き、俄然注目度アップ。鶴橋康夫は、長年読売テレビで腕を揮った名ディレクターで、数年前に会社を定年退職。それを知らないまま、TBS系の二時間ドラマを観ていた私は、あまりの面白さにこれは何か特別番組かと思いきや、クレジットに彼の名前を見つけて納得。それほど凡庸な演出とは一線を画すドラマを作る人です。ずっとドラマに拘ってきた人が、満を持して監督した作品。期待は高かったですが、ほんとに鶴橋康夫か?と目を疑うほど、私にはダメでした。
村尾菊治(豊川悦史)という元流行作家が、情事の果てに女性を殺したと警察に電話します。女性は入江冬香(寺島しのぶ)という夫と子供が三人いる人妻です。情事の最中に冬香に「殺してくれ」と求められるまま、首を絞めた菊治。その果ての死でした。彼女に頼まれたからという村尾の証言が焦点となる裁判中で、菊治と冬香の愛が浮き彫りにされていきます。
渡辺淳一の情痴小説は、中身はくだらない内容が多いのですが、それを性への探求と読ませる工夫があり、伊達には遊んでいない渡辺氏の、自身を投影している主人公の語る薀蓄も適当に興味深く、どうしても女遊びが止められない男達を、しゃあないなぁと、可愛げある風情に感じさせてくれるので、読んでいる間は結構面白いです。しかしこの映画、それもない。
のっけから殺人に至った情交場面が映されますが、まぁ確かに多少は刺激的ですが、びっくりするほどのもんじゃないです。この最初のシーンに限らず、これでもかとセックスシーンが出てきますが、正直全部一本調子の演出です。一般映画の場合性描写というのは、ただ卑猥に扇情的に見えれば良いというのではなく、そこに登場人物の感情が込められなくてはいけないと思うんですが、これが同じようなものが繰り返されるだけ。最初こそ恥ずかしげだった冬香ですが、あれだって子持ちの主婦が夫以外の男と初めて一線を越えるのは、ものすごいエネルギーがなくちゃ出来ないもんでしょうが(未経験なので想像)、いけないわ、とか言いながら、この奥様軽々超えたように私には見えました。イーストウッドが監督した「マディソン群の橋」のメリル・ストリープは、もっと悩んでたけどなぁ。悩むシーンがあるかなしかで、女性客の感情移入は違ってくると思います。何が観ていて疑問かというと、この冬香、罪悪感の描写が一切ないんです。
冬香の性は菊治によって開発された、と描きたかった模様ですが、それにしては性描写からは段々大胆になった様子もそれほど見えません。なのでやれ子供が熱を出したのに連絡がつかなかったり、家族と過ごすはずの自分の誕生日に菊治と逢引したり、子供を学校に送り出してから息せき切って、逢瀬を重ねる様に説得力不足。狂おしさがあまり伝わって来ません。この辺はR15にせず18禁で作ったら、この辺りの不満は解消されたはずです。だいたいこの題材で、高校生が観るか?その辺に作る側の中途半端な思惑を感じます。それにしてもこれくらいの描写で、なんばTOHOは女性専用にスクリーンを用意するなんて、いつの時代の話?
女検事の長谷川京子がどうしようもないです。被疑者取調べで、あんな胸の開いたタンクトップ着るか?女女した口調や噂話を審議にかけるような取調べの内容も失笑もの。法廷でも胸が開いた服をやたら着るし、カツゼツも悪く、職業柄の厳しさや知性が全く見えません。この検事、自分も不倫しているのですが、その女の情念を表現したいようなシーンも出てきますが、普段から発情している風なので落差がなく、そのシーンも盛り上がりません。どうしてこんなキャラにしたのか、私には意味不明です。
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01月16日(火)
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