ID:10442
ケイケイの映画日記
by ケイケイ
[928355hit]
■「プラダを着た悪魔」
わぁ〜面白ーい!もっと笑えるコメディで、単純な恋も仕事も系のサクセスストーリーかと思いきや、重たくならない深みのある作品でした。実は私は短大を卒業の年に結婚してしまい、OL経験がありません。結婚前の学生アルバイトと、10年前からの各種パートのみが私の職歴の全て。早くに結婚したことは後悔していませんが、きちんとお勤めしたことがないというのが、密かに私の最大のコンプレックスなのです。そんな私にも、スクリーン上の女性たちのみならず、頑張ってお仕事している全ての女性たちを応援したくなる作品でした。
名門大学を卒業したジャーナリスト志望のアンディ(アン・ハサウェイ)。まずは経験を積もうとNYにやってきました。オシャレには全然興味のないアンディが、何故か世界中の女性たちの羨望の的のファッション誌「ランウェイ」に就職が決まります。仕事は編集長のミランダ(メリル・ストリープ)の第2アシスタント。しかしミランダは、泣く子も黙る鬼編集長で、信じられないハイレベルな要求を部下に命じる、悪魔のような上司だったのです。
とにかくオープニングから一貫、とってもテンポが良いです。気合を入れてお洒落して出勤するOLたちの様子も小気味よく、期待感が膨らみます。ミランダ初登場シーンは、スタッフの緊張感がユーモラスに伝わってとっても面白い。本当にこんなだったのかしら?(原作は「ヴォーグ」誌編集長のアシスタントだった女性の手記)。他にも無言でバッグとコートをアンディの机へに放り投げるミランダの様子の繰り返しや、くるくる着せ替え人形のように服を着替えるアンディの様子など、やりすぎ一歩手前で押さえているので、わ〜楽しい〜、とここでもテンポの良さが光ります。
ミランダは尊大で傲慢。笑顔一つも見せず、質問してはいけない、要求は全てクリアしなければならない、時には家の用事(それも全て無理難題)も押し付けちゃったりするのに、部下がついてくるのは、仕事が超一流に出来るから。お洒落なギョーカイを描くと思っていたのに、何だかこれって、職人さんの世界?大工さんとか料理人とか。まずは忍の一字で仕事を覚える。それも出来ないのに、上司や師匠をどうのこうのあげつらうのは、百年早いってか?結局どんな世界でも、一流の人について仕事を覚えるって、基本はいっしょなのかも。
最初「ジャーナリスト志望なの。ここに長くはいるつもりはないわ」、だからお洒落なんかどうでもいいの、と言うアンディに、おいおい、そんな気持ちは職場の同僚に失礼じゃないの?そんな甘い気持ちの人に限って、仕事出来ないんだよ(パートさんでもそんな人はいます)と、私が感じていると、予感的中。しかしミランダの片腕ナイジェル(スタンリー・トゥッチ)の助言を受けてからの彼女は、一皮も二皮も剥けたもので、その若さとガッツと素直さに、とても好感が持てます。
ミランダの要求に応え続ける度、ワーカーホリック状態になっていくアンディ。それに反して暗礁に乗り上げる恋や友情などの私生活。これって家庭で非難轟々の旦那さんみたい。でもアンディを観ていると、仕事が出来て、自分が段々磨かれていくのって快感なんだろうな。アンディを羨ましくも感じます。
今の価値観が多様化した時代は、女性も大変です。昔は数年勤めて寿退社だったのが、子供が出来るまではお勤め、それが今や0歳児で保育所に預けて働き続けるのも、珍しくありません。仕事も恋も結婚も子供も、ぜーんぶあきらめないのが理想とされると、辛いモンがありますよね。そんなキャリアガールの心を察するように、素顔のミランダのたった一度の涙、同僚を結果的に蹴落としてしまい、良心の呵責にさいなまれるアンディの心も描写されます。
[5]続きを読む
11月25日(土)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る