ID:10442
ケイケイの映画日記
by ケイケイ
[928222hit]

■「涙そうそう」
昨日観て来ました。ラインシネマは金曜日は会員デーで全作品1000円で鑑賞できる日ですが、それにしても確か公開一ヶ月近く経っているはずなにの、平日とは思えぬ入り。場内女性客が多かったですが、序盤からすすり泣きの声が断続的に聞こえます。が、この涙腺ゆるゆるの私が泣いたのはたった1回、子供の時の兄妹の姿にでした。良いシーン、描き方も随所にありましたが、全体的に脚本が安直で、泣かせることを重きに置いたため、底の浅さを感じさせました。今回ネタバレです。

2001年の沖縄。洋太郎(妻夫木聡)は自分の店を持つ夢を抱いて、朝早くから市場の配達、夜は居酒屋でアルバイトする働き者の青年です。充実した日々を送る彼に、島から高校進学のため妹のカオル(長澤まさみ)が同居することになります。二人は実は血のつながらない兄妹なのですが、洋太郎はカオルは真実を知らないと思っています。洋太郎の恋人の医学生恵子(麻生久美子)や友人(塚本高史)とともに、貧しいながら楽しい日々を送っていました。そんな時洋太郎が店の開店の際に詐欺に遭い、借金まで背負う破目になります。

冒頭原付で品物を配達する洋太郎の姿が、活気のある市場の様子と共に描かれ、働く充実感に溢れとても良いです。明るい笑顔の好青年が似合う妻夫木のキャラクターに合い、出だしは好調。長澤まさみも、ちょっとはしゃぎ過ぎの感はありますが、高校に入るか入らないかの時はあんなものではないでしょうか?彼女も好感度の高い女優さんなので、いやみには感じません。

洋太郎の母(小泉今日子)は彼を連れて、カオルの父と再婚したのですが、その夫も家族を捨てて出て行ってしまい、彼女もほどなく病気で亡くなっていました。臨終の間際「これからはカオルを守ってね。独りぼっちになってしまうから」と言い残して亡くなります。例え育ててくれる祖母がいても、子供の時から両親のいない人生は過酷です。彼女は子供を糧に夫のいない生活を懸命に生きてきたのでしょう、その知恵を息子に授けたのだと思います。守るべき大切な人がいる、その事は人生を前向きに生きさせることです。そして妹=女性を守る、男として正しい大人になって欲しいと言う思いです。洋太郎の父の離別の仕方はわかりませんが、夫二人に守ってもらえなかった彼女の女性としの願望が、息子に託されていたように思います。この言葉が、洋太郎の生きる指針となる魔法の言葉となったのには、肯けるものがありました。

老若の男性が、男の沽券を見せる場面を私は好ましく思います。時代が移り代わっても、その気概は失くならないものであって欲しいと思います。しかし普遍性を描くのと、古臭いのは違うのです。恵子が医者の娘・医者の卵というのは、後々の展開のため必要なのでしょうが、どうも私にはミエミエでよろしくない。釣りあわぬ二人を描きたいなら、恵子が年上で才媛のキャリアガールであることで充分ではないでしょうか?女性が仕事をしっかり頑張るようになって一番の変化は、男性から選ばれるのではなく、対等の立場になったことだと思います。洋太郎のような真っ直ぐで誠実な青年が、このようなことで借金を背負ったとしても、人を観る目のある甲斐性のある女性なら、別れの原因になるとは思いません。二人で返すなりする方が、断然今の男女の有り方にマッチすると思ったのは、私だけでしょうか?

それも朝から晩まで働く様子を描いていましたが、妹を養いながら3年ほどで返せる額です。カオルのことや洋太郎のひけ目を絡ませていましたが、そんなことは承知の上で4年も付き合った男女の別れの原因には、少し強引な気がしました。


[5]続きを読む

10月21日(土)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る