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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「イン・ハー・シューズ」
木曜日に観た今年100本目の作品。今年は夏に子宮筋腫が発覚、秋に手術がドタキャンになりましたが体調に不安があり、病気がわかった時はとても今年は100本は無理だなと思っていたので、去年とは違う感慨があります。この作品は大好きなトニ・コレット主演、監督が「LAコンフィデンシャル」「8Mile」のカーチス・ハンソンということで、もっと早くに見たかったのですが、キャメロン・ディアズとトニの姉妹の生い立ちが自分とかぶる部分があり、昔の苦い思い出に直面するかなぁと少々尻込みもしていました。木曜日は母のお骨を永代供養してもらっている一心寺に先にお参りし(12月は母の祥月命日)、それから母と妹と三人で昔良く通った千日前セントラルで観て来ました。そのせいか観ていて必要以上に胸にこみ上げるものがあり、母が選ばせてくれた100本目かなと感じました。

ローズ(トニ・コレット)とマギー(キャメロン・ディアス)姉妹は、幼い時に実母に死なれ、寂しい心を抱えならが父と継母に育てられました。姉ローズは有能な弁護士として自立しながらも、自分に自信が持てずその苦しさから逃げるように仕事に没頭していました。妹ローズももう30歳も近いというのに、定職にもつかず美しい容姿だけが頼りの生活。今日も酔いつぶれて継母の怒りを買い、ローズの家に転がり込みます。やっかいばりかける妹にうんざりしながらも世話を焼いてしまうローズ。しかし留守中に、やっと出来た恋人とマギーのベッドインを見てしまったローズは、大喧嘩の末マギーを追い出します。以前実家で荷物を整理していた時、亡くなったと思っていた母方の祖母エラ(シャーリー・マクレーン)が生きているのを知ったマギーは、老人ホームに暮らす祖母の元へ身を寄せます。

冒頭飲んだくれてだらしなく男にもたれかかるキャメロンのやさぐれぶりにびっくり。内面のだらしなさも感じさせるあばずれっぷりです。演技ではあまり話題になったことがないキャメロンのこの役作りに、一気に期待が高まります。対するトニはいつも外見からも役になりきる七変化の演技派で、この作品でも有能な仕事振りの表と、コンプレックスを抱える寂しいプライベートを難なく演じ分けていました。

マギーには実は難読症という外見からはわかりにくい障害があり、それが彼女の学習の妨げとなり、芳しくない成績、長続きしない仕事につながっていました。彼女が美容やファッションにばかり熱心になり、男性に寄りかかるのも肯けます。親や姉に迷惑ばかりかけている彼女ですが、自分の苦悩を打ち明けることも出来ず、彼女なりに周囲に遠慮して、本来の意味での甘えるということと縁遠かったことを遠まわしに表現していました。そして母親が生きていれば、きっと彼女が障害を克服できるよう熱心に努力したのではないだろうかと、マギーにとっての母の存在の大きさも浮かび上がります。

ローズはマギーに寝どられた恋人を本当に愛していたのでしょうか?女性として潤いのない生活に現れた、分相応以上の相手に有頂天になっていただけだったのではないでしょうか?彼女にアタックする同僚と話す時の方が、ひっつめた髪、眼鏡、ジャージ姿なのに、生き生きしていました。彼女にとってどちらがふさわしいのか、監督の演出に応えたトニの演技が光ります。

エラに促され、老人ホームで働くようになったマギーの変貌ぶりが嬉しいです。人には自分が必要とされる場所が必要なのだと実感します。世話をする老人から、ゆっくり読むことと、内容をしっかり噛み砕くことを教わったマギー。相手の心が開くまで辛抱強く待つ姿勢は、老いた人ならではの導き方で、マギーへの慈愛を感じます。それは祖母のエラも同じです。心を病んでいた娘の時は結果をあせって母として失敗した彼女ですが、年月が彼女を辛抱強くさせ、マギーには同じ過ちを繰り返したくない気持ちを強く感じました。ホームの老人達と接するうちに、見る見る本来の聡明さと明るさを発揮するマギーに、年配の人にはまだまだ私も教えてもらうことがいっぱいだなと、改めて思いました。


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12月10日(土)
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