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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」
妻は自分の一番恥じる不倫を子供たちに聞かれています。その上生きるため、亡くなった愛人の体をエサにして集ったカニを食べて生き延びたことまで知られてしまいます。思うに三国一の美しさで、資産家の丈五郎に買われるように嫁に来たのでしょう。その美しさを武器に丈五郎の孤独も知ろうとせず、傲慢に振る舞い妻らしいことも何もしなかった彼女。自分も人間以下の辱めを受け、人間ではない家畜以下が日常となっても、子を思い恥ずかしながら生き延びたい希望を捨てずに生きた日々が、丈五郎の孤独も辛さも理解させたのではないでしょうか?舌を噛み自殺しようとする丈五郎が、「憎んでも憎んでも、それでもお前を愛していた」の言葉のあと、涙を流して抱き合い和解する二人。愛と憎しみは表裏一体、誰にも愛されたことがない丈五郎は愛し方を知らず、地獄に相手も道連れにしなければ、愛を勝ち取れなかった辛さに胸が痛みます。
と、ちょっとしみじみしていると(こんな作品で・・・)、唐突に例の有名な
ドッカーン!!!「おかーさーん!!!」
が。異父兄妹のため、この世では結ばれない広介と秀子が世をはかなんで、人間花火となって、頭が、足が、胴体が、結ばれた手が(!!!)バラバラになって宙に舞うというシュールなラストシーンに突入。めっちゃ笑いたかったんですが、場内平日のお昼のためか空いていて、誰も咳払いもしないので、笑いを堪えるのに必死の私。百聞は一見にしかずのものすごいシーンでした。
という見所満載の作品。しかし私が意表をつかれたシーンは、当時の観客も同じだったのではないかと思います。この作品を観ようと思ったのは、見世物小屋を観るのと同じ感覚だと思います(もちろん私も)。期待に違わぬシーンに満足していた終盤、あんな真っ当な愛を見せられ、この映画の印象が変わったのでは。語り継がれる理由は、カルトもカルト、大カルト大会のこの作品の、この部分のせいではないかと思います。ドッカーン!は、スパイスということで。
09月22日(金)
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