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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ワン・バトル・アフター・アナザー」
何時敵が現れるかのストレスで、すっかり別人のようなボブ。ヤク中で超過保護なパパになり果てている。あの暮らしぶりは、生活保護なんだろうか?対する娘のウィラは元気いっぱい、パパに少々の嘘もつきながら、青春を謳歌。それが思春期ってもんです。頼りないパパを心配する様子が健気。ウィラを演じるチェイスも、びっくりする程チャーミング!すんごい美人さんですですが、それよりとにかくハツラツとして終始勝気なところが、大いに気に入りました。
レオはまだまだ若々しく精悍な役でも大丈夫なのに、ひたすら娘を愛するボブを、愛も愛嬌も男の誠もある中年男として演じていて、もちろん秀逸な存在感です。レオは本当に作品選びが上手い。
逃亡の最中、父親のボブからは母親は英雄だと教えられていたウィラ(ヤク中だけど良い父ちゃんだ、ボブ)。しかし、フレンチ75のメンバーは、彼女の証言で追われる身になったと知ります。裏切者呼ばわりのパーフィディア。しかし捕まって、当初は勇敢にしらを切るも、家族を持ち出されたりで、次々と心ならずも証言していく元メンバー。その時、パーフィディアも心底辛かったのだと、理解したでしょうか?私はそれを表現していると思いました。
もう一人、存在感抜群なのが、センセイのベニチオ。続け様にベニチオを観て、ウフウフするとは、思いませんでした(笑)。ボブのピンチに表れては、彼を助けます。一見モサイ中年男なれど、常に泰然自若で難儀を事無く納めます。これが大人の余裕ってヤツですか?と、段々魅惑の中年男性に見えてくる(笑)。
これはセンセイの信念が、脚本と演技と共に、浮き上がってきたからだと思う。「自分をトム・クルーズだと思え!」も出色の台詞。前述「私のプッシー」共々、草葉の陰で、和田誠がメモってくれていたら、嬉しいなぁ。
アクションでは前半の爆破シーンと、終盤のカーチェイスが秀逸。特にカーチェイスがすごい!あんな道路、あるんですね。ピンチでの咄嗟のウィラの判断は、彼女がクレバーだと証明しています。
パーフィディアの手紙がとても良い。きっと彼女は、今はビッチでも過激でもなく、真っ当な形で闘争していると思います。愛する娘と夫に対しての贖罪です。「ママの代りにパパを抱きしめて」。パーフィディアは、ウィラの出生の事を、ボブが気づいていると解っていると思う。それでも父として娘を育ててくれると信じているのですね。信頼はやっぱり=愛に繋がるのだと思います。
闘争の在り方、移民問題、未だ蔓延る唾棄すべき白人至上主義の団体の欺瞞を主題にしながら、ラストは血は水よりも濃く、でも血に勝る絆もありと、平凡だけど普遍的な真理を、まったりと映して、とても清々しい。ユーモアもハラハラドキドキもいっぱい、社会情勢もあれこれ掘り下げて、そして心に沁み込む感動もあり。エンタメのお手本みたいな作品です。どうぞご覧あれ。
10月11日(土)
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