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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「タンゴの後で」
一方、シャロンより前の時代に、無駄なヌードシーンを拒否して抗ったマリアの仕事は、先細りでした。あの時代、大御所でもない、たかが一人の女優の言葉に、耳を傾けてくれる人は、少なかったはず。これ程勇気のある人だとも、全く知りませんでした。どの媒体も取り上げなかったのでしょう。

シャロンの他にも、亡くなったオリヴィア・ハッセーとレナード・ホワイティングは、「ロミオとジュリエット」では、ヌードシーンは使わないと言われていたのに、ゼフィレッリに騙されて使用されたと、訴え出ました。これもつい最近です。自分たちの尊厳を取り戻す決意をするのに、実に50年以上の年月を要したわけです。

精神病院に入院したマリアは、母を恋しがるのですが、母は面会にも来ない。父親の元に通う娘を許さない。娘を恫喝して抑え込むこむ様子が描かれます。シングルマザーで辛酸は舐めたでしょうが、これは無いよななぁ。原作はマリアの従兄妹であるヴァネッサ・シュナイダー。劇中でも、従兄妹を可愛がるマリアの様子が描かれます。マリアの人格の崩壊の一端は、伯母にもあると、ヴァネッサは言いたいのでしょう。

アナマリアはとても可憐で美しく、マリア以上の美人です。アナマリアは好演でしたが、ここは正直、もう少し似せた人でも良かったかとは思います。その方が、作品により感情移入出来た気がするなぁ。苛烈な役柄が多いアナマリアですが、ハリウッド進出の「ミッキー17」では、容姿と落差のない役柄でした。今後も活躍を期待したいです。マット・ディロンのブランドは、これは荷が重かった模様。終始ブランドには思えませんでした。マットより格上だけど(多分。私の想い込みか?)、エドワード・ノートンなら、全く自分とは違うブランドにも、寄せてきたのではと思います。でもブランド役は今の情勢なら、ベルトルッチ役以上に、やりたくない役だと思います。

劇中の後半、マリアに寄り添い、甲斐甲斐しく世話をする女子大生のヌール(セレスト・ブリュンケル)。劇中唯一、心からマリアを受け入れ愛した人でした。彼女とのその後がどうなったのか、気になりました。映画を観る限り、マリアが自殺でせず生涯を終えたのは、私はヌールの献身であったと思います。真摯に描かれた、力作です。

09月15日(月)
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