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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「正欲」
この作品、人との繋がりをネットに求める危うさも描いています。私は小学生が学校に行かないでYouTubeに配信するのは、やっぱり反対。まだ人間形成が出来ていない時に、不特定多数の人に、自分を曝け出すのは危険過ぎます。佳道も、夏月の存在が、他の人とも繋がりたいとの思いを抱かせたのでしょう。人との接触が希薄だったため、クズを引いちゃったんでしょうね。

私も40歳になるかならないかで、ネットの世界に入り、たくさんのお友達が出来て、盛んにオフ会したものです。善き人ばかりで、今も楽しく繋がっている方も多く、運が良かったのだと、この作品を観て思いました。私は趣味としてはマジョリティの映画だったし、レビューは、書く人の年齢・性別・知力・体力・人生の経験値等、大げさに言えば、書く人の全てが投影されるもので、それも功を奏したのでしょう。それ故に、マイノリティーの孤独さが、切々と伝わってきます。

稲垣吾郎は本当に不思議な人で、知性はあるのに、鈍感で無神経な、でも人の心はちゃんとある人を演じて、本当に上手い。水に性的興奮を覚えるガッキーのシーンは、官能的で清廉で、綺麗だなとさえ思いました。これは多分ガッキーが演じているからでしょう。この二人をキャスティングした事が、成功の最大の要因だと思います。

世の中の価値観は、多種多様となって、選択肢が増えました。しかし何も考えず固定観念で生きていた昔の方が、「それだけ」だったので、迷う事が無かった分、楽だったかも。でも楽の先に幸せがあるかと言えば、さにあらず。茨の道の向うに待つ幸せも、きっとあります。「女三界に家無し」を引きずった時代に生きた私は、今の時代の方が良いと、言い切りたい。多様性を認めるのは、人権を守る事だと、私は思います。

自分の辞書にない事は、理解出来なくていいんです。私もそんな事、たくさんあるもの。でもその事を否定しないこと。世の中は自分の思考が全てではないと、認識することが大切だと思いました。特異な性癖をモチーフに、今の時代に、とても大切な事を教えてくれる作品でした。

11月19日(日)
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