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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「月」


う〜ん・・・。この作品を観たシネ・ヌーヴォは、有難い事に一か月前に上映時間が解ります。久しぶりにヌーヴォで観たくて、時間を合わせてやっと鑑賞。安全杯だと信じ込んでいたら、まさかの大外れ。さもリアルに描いているようで、本当に現場をリサーチしたのか?という場面続出で、その場限りで繋いでいく内容に、だんだん腹立たしくなりました。監督は石井裕也。今回罵詈雑言になりそうなので、ネタバレです。

新作が書けなくなった作家の洋子(宮沢りえ)は、売れないアニメーション作家の夫(オダギリジョー)と二人暮らし。生まれて三年間寝たきりだった息子を看取った、辛い過去があります。息子の死から立ち直りつつある洋子は、知的障害者施設の介護職員として働き始めます。施設の職員には、陽子(二階堂ふみ)やさとくん(磯村勇斗)らがおり、厳しい介護の現場に、皆が疲弊しいます。そんな折、洋子の妊娠が発覚。洋子は高齢出産となり、出生前診断が可能です。夫婦は命の選択という岐路に立たされます。

この作品は記憶にも鮮明な、相模原市の介護施設で、優性思想を持った介護職員の大量殺人を基にした作品です。常に禍々しく薄暗い画面、鬱蒼とした森、物々しい施設の様子。まるでダークホラーです。そのつもりですか?違いますよね?それと余計な描写、情報があり過ぎて、障碍者の人権や命を考えるはずのテーマが、絞り込めておらず、大変散漫な印象です。

例えば陽子。作家志望で、ここで働けば、題材等得るものがあると、言わばスケベ根性で働いています。この設定に文句はありません。しかし、父が不倫体質、自分の才能の無さに生きている値打ちがない、上手く行かない自分の人生のストレスからの虚言癖。必要ありません。ストレスからの虚言癖なら、仕事の辛さだけに絞るべき。

洋子は震災の時の取材体制のせいで、書けなくなりました。話は通じますが、これも話を広げすぎ。障害を負った子供の生死が、書けなくなった理由で充分。そして何故、主治医の産婦人科医(板谷由夏)が、洋子の友人なの?これも余計。アドバイスに「友達としてではなく、医師として言うね」と断るなら、ただ主治医と患者の関係で充分です。わざわざ友人にする理由が解らない。

三年ぶりに仕事を見つけて来た夫。マンションの管理員です。私は分譲マンションの管理員として10年目に入りましたが、ここの描写がズタズタ。夫の年齢は40代半ばくらいか?この仕事も低賃金です。私が入社した頃は60歳からスタートする仕事だと言われ、私は散々あちこちで「若いのになんで?」と言われました。年々仕事を始める年齢は高くなり、今は65歳です。夫の年齢ならもっと賃金の高い仕事があります。何故この仕事?二人体制という事は、100軒以上の物件なのでしょうが、ゴミ庫が無駄に広すぎ。あの広さなら、ゴミはそれぞれ分別できるコンテナがあります。そして大規模なマンション程、清掃専従の人が別に居るので、ゴミ庫の清掃もしてくれるはずです。防犯カメラのウィンドが一つで画面占領も有り得ない。通常4分割〜8分割です。管理事務所で待機中は、そうやってマンション全体を監視しています。さとくんが、いきなり夫の勤務中にマンションに入れるのも謎。オートロックは?無いなら、正面の窓を開けっぱなしはあり得ない。何故なら、立ち入り禁止の管理事務所に、そこから突進される危険があるから。

極めつけは相方の管理員。性格悪いのはまだしも、「あんたの履歴書を読んだけど」。本当に憤慨しました。そんな重要な個人情報、会社の庶務方でも普通閲覧出来ません。ましてや現場職。どうして読めたの?誰が見せたの?うちは毎月研修がありますが、必ずコンプラについて言及があります。こんないい加減な仕事内容、悪意満タンの人でも出来る仕事ではありません。自分の仕事をバカにされた思いでした。何のために夫の仕事を管理員にしたの?これも必要ないです。


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11月06日(月)
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