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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「福田村事件」
作中、男たちが常に心に澱を抱えている中、一服の清涼剤のように自由闊達な井浦新の妻、田中麗奈。彼女の伸びやかさは、教養とと共に、豊かな親の財力もあるのでしょう。貧しさを知らないのです。しかしその財力は、朝鮮で企業して朝鮮人から様々に搾取しているはずの、父親の財力です。皮肉なようですが、その環境から、ニュートラルでリベラルな思考を持つ人が現れるのは、光を感じました。

私が感服したのは、平易な言葉をセリフに使っていた事。差別、人権、政府やジャーナリズムの腐敗、正しい教育の必要性、群集心理の恐ろしさ。扱っているテーマは全て、ともすれば、暗く重たくなるものです。しかし重たさはなく、重厚感はあっても軽妙、躍動感すらある。どうして上記の事が起るのか、誰が観ても解り易く、深く推考したくなる作りだった事です。ほんと、凄い!

飴売りの朝鮮人の少女が、殺されるときに自分の韓国名を叫んだこと、永山瑛太が、間違いで殺されそうになっているのに、「朝鮮人なら殺していいんか!」と絶叫した事、忘れ難いシーンが満載でした。貧者の叫びの尊さに、人は誰しも貧者である自覚を持たなければと、強く心に誓いました。語り継がれる作品になると思います。

09月16日(土)
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