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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「離愁」
しかし、妻が出産した病院へ何故連れて行く?例え乞われたとしても、妻が見つかれば、二人の関係は終了じゃないの?おまけに幼い娘を抱え、心細い中、一人で出産だよ?そして病院に着くなり、「男の子だった」と喜び、「娘に会ってくる。少し待っていて」と言い残し、娘のところへ。いやいや、妻への労いは?もしアンナの前で憚られるなら、男の子だ、娘に会ってくるも憚られるはず。勝手な男だと憤る私(!)。対するアンナも、図々しい女だと腹立たしかったですが、すっと立ち去った事に、理性を感じました。きっと頼る人もいない中、心細かったんだと感じました。これは後で理性ではなく、相手を思う聡明な判断だと思い知ります。
三年経ち、ドイツに占拠されながらも、家族四人で暮らすジュリアン。「妻は何か感じ取っているかもしれない。しかし、何も言わない。嫉妬も情熱もない女だ」と、彼のナレーションが入ります。はっ???完全に妻を見下す発言。それ、子供抱えて言えませんから。家庭に波風立てたくないからでしょう?戦火の不穏な中、家庭が壊れてしまっては、子供を育てられない。先の「結婚している」発言もあるし、この男、もしかしてモラ?
そして終盤。この画像ですよ。どこもかしこも、純愛だの素晴らしいラストだの書いてある。ジュリアンが独身だと思い込んでいた私も、そうなのだと信じていました。でも実際は既婚者。誰も書かないなら、私が書こう。この男は駄目です!
いい?ジュリアンはいいでしょうよ、どんな罪咎が待っていても。「純愛」を貫いたんだから。では妻子は?この戦火の中で、どうして幼い子を抱えて妻が生きていくの?それも命懸けで自分が子供を出産している時に、夫は他の女と情を交わしており、有ろうことか、窮地に自分たちではなく、その女を選ぶ。いったい誰の子供なの?私なら発狂しますよ。いや子供のために発狂も出来ん。ワーーーーーーーーーーー!!!
そして尋問する警察官から、アンナは当時からレジスタンスというか、スパイだったのではないかと感じました。「どちらが誘ったのか?男か女か」。誘ったのはアンナ。身の上話も半分は嘘かもしれない。最中に派手目女性がウィンクしたのも、彼女も同じ立場だったかも知れない。派手目女性は、どうして客車に乗らないのか?問われ「女が苦手なの」と答えている。アンナがジュリアンと情を交わしていた時の微笑みも、生の享受ではなく、首尾よくいったの安堵かも知れない。
偽の証明書までは想定内。愛人の立場で、もっとジュリアンを利用出来たはずが、病院で気が変わる。それは車中でシングルマザーが亡くなり、その赤ちゃんを抱いていたぬくもりが、アンナを立ち去らせたのだと思います。ジュリアンの子供たちを、同じ境遇にしてはいけないと痛感したのでしょう。
折角のアンナの想いを無にするジュリアン。彼女こそ、ジュリアンを愛し始めていたのでしょう。だから相手の立場を慮る。翻ってジュリアン。アンタ妻子持ちだよ?アンナこそ運命の女ってか?運命なんかどうでもいいから、妻子を守りな。結婚したなら一番大事なのは、話し合いでもなく愛情でもなく、相手の人生に責任を持つ事です。次に大切なのは、子供がいれば、その子たちをしっかり育てる事。極端な事を言えば、愛情はなくても良いわけですよ、この二つがしっかりしていれば。でも愛情なくば辛いから、夫婦は誠実に、お互いを一番にするべき努力をするわけな。これは今も昔もどんな時でも、同じはず。
命懸けの異常な空間の中、芽生えた愛情を偽りとは言いません。でもそれは、日常が戻れば、リセットされるべきです。それが人が持つ理性ではないですかね?このラストは、アンナの女心さえ無にして、私は到底受け入れられません。
私はロミー・シュナイダーの作品で何が好きかと言われたら、ほとんど観てないのな。取り敢えず「地獄の貴婦人」は好きです(ワハハ!)。今回出ずっぱりの彼女を観て、何と美しい人かと惚れ惚れ。どちらかと言えば、角ばった男顔の美貌ですが、クールビューティーではない、上品な色香が漂う。所作がとても上品で、パンをほうばる様子の愛らしい事。素晴らしい!
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08月11日(金)
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