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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ザ・ホエール」
魔性男のチャーリーは、自分で自分に罰を与えたんじゃないかな?それが肥え太った醜い姿です。ピザの配達員の様子は残酷ですが、これがチャーリーの望む事だったのかも。周囲の人を不幸にし、異形の身体となった彼が、嫌いかと問われれば、私も好きだと答えます。彼は欲深い男ですが、その欲深さは、罪深いのではなく、人間臭く感じるのです。アランに告白された時、妻と娘とのの「程ほどの幸せ」をチョイスしていたら、今もその幸せを保っていたと思います。でもアランとの至福の日々は、残酷な未来が待っていましたが、チャーリーに後悔はなかったのでしょうね。後悔ではなく、唯一の心残りが、エリーだったのでしょう。

今作でオスカー受賞のフレイザーは、渾身の熱演。巨大になったチャーリーの、知性的で聡明な内面を充分に感じさせてくれます。獣のようにジャンクフードを食す場面では、汚らしいのに画面から哀しみが漂います。「以前もそれほどハンサムではなかったが」と、自らを語りますが、何をご謙遜を。若かりし頃のフレイザーは、それは精悍なハンサムでした。リズもメアリーも、今の肉の塊の彼が、偽物なのだと認識しているんでしょうね。

冒頭で読まれた「白鯨」に関する文章が、何度も出てきます。それが何なのか明かされる時、胸がいっぱいになりました。私の父も女にだらしなく、同居中も別居後も、母は悪口を言い続ける。別居したのは私が18歳の頃、ちょうどエリーくらいです。「あんたたち(私と妹)なんか、あの男はどうでもいいんや。だから捨てた」と言い続けましたが、チャーリーと同じく、ずっと私たちに、充分な生活費を渡してくれました。会う時は「お前たちの事を忘れた事は一度もない」と言うのを、思い出しました。それとこれとは違うようですね。子供的には繋がって欲しいよね、>エリー。子供を思うなら、不倫はするべきではありません。

ラストに映るチャーリーの姿は、残したお金以上に、エリーに勇気を与えるはずです。数奇な経験をした彼女たち皆に、平穏な幸せが訪れるよう、祈って止みません。

04月25日(火)
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