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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ある男」
父親似の自分が恐ろしいのです。整形すれば良いと思われるでしょうか?私は自他ともに父親似だと認識していますが、母の面影も充分にあります。その母の葬儀の時、叔母から母が、目と鼻を整形していたと聞かされた時は、どれほど仰天したか。父親似の私が、整形している母にも似ているのです。紛れもなく、それが「血」なのでしょう。鏡を観る度、谷口が慟哭するのは、それを知っているからです。
自分の妻の秘密を知った城戸のラストシーンに含みがあります。彼は在日である出自を隠さず生きている。だからなのか妻は、常に上から目線で夫に対して物言いし、観ていて傲慢だと思いました。挙句に夫に子供を預けての狼藉。自分がバカにされたと城戸は思ったでしょう。それは自分が、「在日」だったからか?自分が日本人であっても、妻は同じことをしたのか?と。谷口は自分の親、城戸は国籍と、彼らはずっと「血」に捕らわれて生きなくてはいけないのか?
私には在日としての誇りなど、ありません。ただ生まれ持った出自が、在日であった、それだけ。それを受け入れて、粛々と生きてきただけです。その延長線上で、城戸や私のように帰化をチョイスする人もいる。在日として誇りを持っているのではなく、人としての誇りを持って生きてきました。もし、次に日本に生まれるなら、私は日本人として生まれたい。その方が楽だから。韓国に生まれたら、韓国人として生まれたい。城戸の姿は、谷口に触発され、if、もしも・・・を映していたと思います。
谷口や本当の谷口(仲野太賀)のした事が、本当にあるのかどうか、判りません。全てを終え、真実を知った里枝の「今となっては、あの人がどんな過去を背負っていたか、関係なかったと思えます。私たちと過ごした四年が、全てだと思います」。この心に染み入る言葉こそ、たくさんの「谷口たち」への、最大の真心なのだと思います。私も里枝の言葉を、ずっと心に刻みつけたいと思いました。
12月04日(日)
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