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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「82年生まれ、キム・ジヨン」
姑も、デリカシーのない言動と言い方が優しくないのは欠点ですが、決して悪意があるわけではない。ソウルと釜山は離れているでしょうが、盆正月くらいの帰省で文句が言われないのは、韓国の長男としては恵まれている方です。だって盆正月は韓国人の一大行事、「法事」があります。長男無しなんて、考えられないと思う。家を継ぐ価値観が大きい韓国では、姑世代の人にしたら、当たり前だと私は思います。「病」を聞き、嫁のために漢方薬を送ったり、息子から電話もするなと言われて、家にも寄らない。息子が育休すると聞き怒りますが、それは出世に響く現実を知っているからです。何よりあんなに素敵な息子を育てたじゃありませんか。あんなもんですよ、姑さんは。
仲の良かった元同僚ともまだ付き合いがあり、居心地の悪くない実家。そしてあんなに良き母がいるのです。それでもジヨンは病んだ。
キム・ジヨンとは、韓国女性の集大成なのでしょう。今も昔も脈々と続く韓国女性の憂い。それをキム・ジヨンと言う女性を中心に描くことで、刷り込まれて当たり前になっている現状も、それは間違っていると、繊細にしなやかに、誰にも理解して貰えるように、静かに訴えているのだと思いました。
恵まれたジヨンが病むことは、誰でもが「キム・ジヨン」になってしまう可能性があると言う事です。幸いにも「キム・ジヨン」にならなかった、私やあなたは、もっともっと自分を褒めていい。女性主任は「母のお陰で仕事が出来て感謝している」と、世間に向けて発言します。それは本心でしょう。でもそれだけか?自分の頑張りが一番じゃないの?そう言う女性を、世間が嫌うのを、女性主任は知っているのです。夫に感謝は出てこなかった。そこには、夫が子育てや家事を手伝えば、母に迷惑をかけなかったとの思いが、私はあると思います。
私もあれこれ周りに人に感謝するのは、ずっと感謝し続けて正直もう感謝疲れしている。誰も言ってくれないけど、私が頑張ったから、今の境涯があると自分を褒めたいと、強く思いました。
この作品は、次代の男性たちに希望を見出しています。ジヨンの夫しかり、ジヨンの弟しかり。姉を気遣い父に「姉さんの好きのものは?」と聞くと「あんぱん」と答えます。しかし手を付けない姉。何故なら「あんぱんは嫌い。好きなのはクリームパン」と答えます。息子ばかりに関心がある父は、姉、それも次女には関心がなかったのですね。弟は困惑した表情と共に「次はクリームパン買ってくるよ」言います。弟は娘が出来ても、きっと好物は覚えるはず。
韓国のみならず、日本でも深々と心に響く作品だと思います。これが古いと思う人は、現実を知らないのだと思います。秀逸なフェミニズム映画です。
10月14日(水)
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