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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「全裸監督 1話〜8話」(Netflix)
黒木香と言えば、腋毛。何故彼女が腋毛を生やしていたのか、何となくこの作品で理解出来ました。あれは彼女の反骨心だったのじゃないかな?異常に躾の厳しい母親(小雪)の抑圧から、身だしなみを整えない事で、密かな開放感を味わっていたのじゃないかと。あの時代は、良家の子女はノースリーブで出歩く事はなく、処理していなくても、母親にはばれませんから。

この黒木香を演じる新星の森田望智が超素晴らしい!色んな所で絶賛ですが、さもありなん。本名の恵美の時代の、抑圧された自分を持て余している様子を繊細に好演。そして体当たりで振り切って見せる濡れ場の、圧倒的な臨場感。黒木香となってからの演技は、私たちが記憶する黒木香に、ぴったり重なります。それでいて、透明感や清楚さは失わないと言う、奇跡の演技でした。この作品では、村西とおると、黒木香だけが実名。他はモデルはあるものの、別の名前です。主役と並ぶ重圧を、見事に跳ね返しています。

山田孝之は、本当に何でも演じるなぁと感心。撮影現場の口調など、テレビで見かけた監督そっくりでした。でも裏ではニコリともせず、破天荒ながらストイックにエロを追求し、スタッフに感謝しつつも、命じている事はサディスト並みです。そして踏まれても蹴られても、金に転ばぬ硬骨漢でもある。私の記憶する村西とおるより、容姿から内面まで、偉く男前なんですけど(笑)。実際はどうだったのかしら?

玉山鉄二は、誠実で温厚、切れ者で変態(ハイ)の川田を、普段の男前オーラを消して好演。柄本時生、後藤剛範は、コメディリリーフ的な分も担っており、出すぎず引かずの好演でした。伊藤沙莉は、AV業界に身を置く女性の、彼女たちしか出来ない値打ちを、私たちに知らせてくれます。元々この子が好きで、私は推しなんで、この作品で彼女の名前がもっと上がれば嬉しいです。

そしてすっごくびっくりしたのが、トシ役の満島真之介。こんなに芝居上手だったっけ?村西の相棒となったのは、その辺のチンピラで、他にやる事もなかったからでしょう。しかし村西と組んで、「夢」を抱く事の喜びを知ったのですね。村西とは呼ばず、独り「おっさん」と呼ぶのは、他のスタッフに自分は別格と思わせたかったんじゃないかな。村西に反発する川田に、「ここのアタマはおっさんだ!俺たちゃ、おっさんの言う事について行けばいいんだよ!」と、啖呵を切るトシには、痺れました。それはトシが村西に痺れていたからでしょう。村西はトシにとって、師であり、兄であり、親友だったのだと思います。

その二人の関係性が崩れる8話。トシの慟哭に、私以外も泣いた人は多かったと思います。とにかく素晴らしい演技で、演技巧者で高名な姉に引けを取らない熱演でした。

この作品を観て、村西とおるや黒木香に興味が湧いたら、大成功。早くも続編の製作が決まったようですね。ネット配信のみならず、時代に名を残す作品になると思います。

08月20日(火)
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