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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「空飛ぶタイヤ」
主演の長瀬は、当初こそ中小企業の社長には見せませんが、だんだん社員思いの「親父さん」に見えてくる。決して上手くはないのですが、熱演だし存在感は抜群です。存在感と言えば、笹野高史。赤松に忌憚なく物を言い、叱咤激励を繰り返しながら、赤松に付いて行きます。良い意味で自分の身の程を知り、置かれた場所で最大限の力を発揮する姿は、大企業で働く人たちに引けを取らず、とても素敵でした。提案から間髪入れずの、「お幾らですか?」は良かったなぁ。
ビリング二番手のディーン・フジオカは、私は映画の彼は初めてで、アップになる度、まぁ男前だわと感激(笑・←長瀬智也的バタ臭い男前より、ディーンのような、お公家さん的顔が好き)。可もなく不可もなくでしたが、映画は足を運んで貰ってなんぼ。全体にドラマ版の演技巧者たちより、華と旬を取ったキャスティングでしたが、私は良かったと思います。
私の父は現在91歳。今は五人目の情の濃い優しい奥さんに手厚く世話をしてもらい、悠々自適です。私が子供の頃の父は、業種は違いますが、一代で赤松運送のような会社を経営しており、ちょうど事務所はあんな感じで、「社長室」もあんな感じ。とても懐かしかったです。今思えばタコ部屋でしたが、地方からの従業員のため寮もあり、三食付。家族持ちには社宅もあり、社会制度が確立していない45年以上昔の中小には珍しく、社会保険・厚生年金・労災も完備しており、株式にもしていました。
父の痛恨は、笹野高史みたいな番頭さんがおらず、私の母や自分の息子たち(私の異母兄)と険悪であった事。あんなにお金がざくざくあったのに、本当に徐々に衰退していき、最後は廃業。片や夫の実家は赤貧洗うが如しだったのが、両親の愛情たっぷりに育てられた4人の子供たちは、働くようになると、金銭的に両親を支えるようになります。姑はいつも「子供のお陰で、昔を思えば今は大金持ちや」と笑っていました。家族が元気で仲良く笑っていれば、何とかなる。これが両方の両親から得た、私の教訓です。
周りにはロクな人がおらず、窮地はいつも一人でくぐってきた父。本当に人徳のない親父やでと思っていましたが(そして五回も結婚している、子供にとっては、はた迷惑過ぎる親)、「社員や家族を必ず守る」と宣言した赤松を見て、父もそうだったのでしょう。偉かったのだと今更思いました。それが晩年の今の平穏に繋がっているのだと思います。人生とは、誰にも等しくプラスマイナスですね。
現在膝を痛めて、絶賛リハビリ中の毎日でして、鑑賞の当日は仕事休みでしたが、梅雨の晴れ間に布団を干し、タオルケットを洗い、シーツを洗い、病院に駆け込み、スーパーに買出しに行くと、実はこれしか時間が合わなかったんですね(笑)。優先順位下位でしたが、ふらっと近所のシネコンで見たのが、ヒット。遠出して小難しい映画もいいのですが、近場で気軽に元気を貰う。映画の醍醐味の一つだなと、再確認しています。
06月30日(土)
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