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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「たかが世界の終わり」
ルイを演じるギャスパー・ウリエルが、静かな存在感。絶世の美少年でしたが、今も憂いのある美青年です。ほとんど台詞のない役で、感情を表すのは難しかったろうに、今ルイは何を考えているのか、こちらに伝わってきます。狂言回しのように、家族それぞれの思いを浮かび上がらせたルイですが、ラスト近く、思いを込めて家族に語ります。それは母が望んだ内容ですが、それだけではなく、本心からの、ルイの願望も入っているはず。
ナタリー・バイのお母さんも出色の演技。一軒破天荒な母ですが、家族の集まりに手料理を振る舞い、時には道化のように笑いを誘おうとします。何か重大な事があるのだと、多分わかっているのに、次々食べ物を出しては、気をそらず。ルイを黙らせてしまうのは、聞きたくなかったのでしょう。ラスト、ルイではなくアントワーヌを追いかけたのには、とても肯きました。とってもいいお母さんです。曲がりなりにも、この家庭が成り立っているのは、この母あってだと思う。
その他、役者は皆熱演・好演でした。
私も家族が集まると、一触即発。常に気の張る家庭に育ちました。今の楽しく笑い会う自分の家庭は、毎日が奇跡のように思えるのです。今振り返れば、皆が皆、屈託や不満を抱え、自分を守ることで精一杯だったのだと思います。誰かを思いやる余裕なんか、なかったんだ。毎日が嵐みたいなかつてを、この作品を観て、懐かしいような気持ちで思い出しました。
家族という、厄介で煩わしく、そして愛おしいもの。その全てが描かれた作品でした。ドランの作品は、これからも見逃せません。
02月18日(土)
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