ID:10442
ケイケイの映画日記
by ケイケイ
[927410hit]

■「愚行録」


胸クソ悪い映画です。でも面白いから、始末が悪い(笑)。一連の湊かなえ作品に通じる、「イヤミス」的な作品。そしてドス暗い。面白いけど誰にも感情移入出来ない中、ラストに腑に落ちるプロットもあって、最後まで楽しめました。監督はこれがデビュー作の石川慶。

雑誌記者の田中武志(妻夫木聡)。一年前起こった田向家惨殺事件のを、もう一度調べなおしています。事件は夫・浩樹(小出恵介)と妻・友季恵(松本若菜)と一人娘が殺されています。エリート社員の夫、美しい妻の高学歴夫妻と可愛い娘。誰もが羨望するような家庭を築いていた彼ら。しかし、調べ直していくうちに、世間が知らない彼らの裏の顔が見えてきます。田中は同時に、自分の娘の虐待で逮捕された妹の光子(満島ひかり)がおり、田中は面会に行きます。

友季恵の出身校が、慶応みたいと思っていたら、原作はもろ実名で慶応大学なんだとか。よく大学や出身者から抗議が来なかったなと思うほど、大学内での、内部出身者と外部出身者、出自や容姿を元にした、ヒエラルキーが描かれます。外部出身者が内部出身者に認めてられて仲間入りが「許される」と、昇格とか言われちゃうんだよ?原作者(貫井徳郎)は一環として、出身者から取材したとしているらしいですが、マジですか?来年から受験者が減るレベル。

田中や光子、田向夫妻は、30代前半から半ばくらいか?浩樹にしても、自己チューで自分勝手な理論の持ち主で、自分の利益になる女性に手を出しては、使い捨て。友人もシャーシャーと二人で弄んだ女性の話を自慢げに田中にして、その直後あんな良い奴が何故殺されなければならないのか?と涙ぐむ。バカなの?お前も死ねよ。ちなみに、二人の出身校は原作では早稲田と実名らしい(笑)。もうこなると、原作者は確信を持って、イヤミス的手法を使って、華やかな高学歴者の傲慢さを描いているのが、わかります。

しかし女子たちもなぁ。大学から慶応に受かるほどの頭があって、美貌があって、それなのに男捕まえるしか、頭使わないの?浩樹たちに弄ばれた会社のOLも、いい会社に勤めているんだから、エリート社員を捕獲しなきゃと必死で、やっぱりバカみたい。弄ばれても、あんまり同情が沸かない。

彼女たちの学生時代は、今から12〜13前でしょうか?今より女性は社会的には辛い立場であったでしょうが、ネットや雑誌で読む限り、今もあまり変わらないのですね。でもね、あんたたち間違えているよ。

家柄や親の財力や会社と結婚するんじゃないのよ。あくまでも男性個人と結婚するの。恋愛と結婚が違うと言われるのはね、好きでもない相手と条件だけで結婚するのではなく、この人となら、誠実で暖かい家庭が築けるか?と言う意味です。好きだけど、結婚には向かないなと思う男性、いるでしょう?事実、浩樹の元カノ(市川由衣)の最後の一言は、死ぬまで浩樹と関係が続いていたと言う事です。

冒頭のバスのシーンから、一癖ある男だと印象づけた田中。彼が何故まだ田向家に拘るのかが、明かされてからの展開がお見事。数々の伏線が全部が繋がっていく過程は、ミステリーとして見応えがあります。

浩樹と光子は、両親ともに虐待されて育ちました。育児放棄の母親、DVで娘に性的暴行を働く父親。守ってやらない母。その母親の現在の暮らしが描かれます。何と再婚して、一人息子を得ての平穏な暮らし。「あの子達で失敗したから、今度こそ」。反省して学習したんですか?ハンマーでぶん殴ってやりたくなりました。再婚なんかせず、反省したなら、陰からでもいいから、息子と娘を見守ってやれよ。子が自分を尊重できず、虐待事件を起こしたのは、明らかに両親のせいです。


[5]続きを読む

02月22日(水)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る