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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「真夜中のゆりかご」
辿り着いた驚愕の秘密。ですが私は腑に落ちました。母性と言うのは子育てしている間に育つものです。ですが手のかかる子、劣悪な環境に見を置かれた母親たちは、その萌芽をむしられるのです。サネの場合は、クズの夫から逃げる智恵を身に付けるべきだし、救い出せる社会の整備も必要だと思いました。
夫の育児や家事の手伝いは、大いに結構なのですが、昨今のイクメンブームも、母親から母性の芽を摘んでいるのだと、この作品を観て痛感しました。子供からの愛情の対象として、父親は母親には決して勝てないものだと、私は思っています。そして幼い子に取って、自分が一番の存在なのだと言う自負と気概がなければ、育児は出来ません。だから辛抱も我慢も出来るのです。
誤解を恐れず言えば、母親が家事をすることをも大切です。食事を作って「お母さんのご飯は美味しいね」と、赤ちゃんに語りかければ、妻は喜んで次の日もご飯を作るでしょう。そうやって巣作りや、食育も覚えて行くのです。大事なのは、幼い母親である妻を支え励まし、自信を付けさせる事です。母親の代わりになる事ではありません。大事なのは、育児が楽しいと妻に感じさせる事。イクメンで一番大切な事は、それじゃないでしょうか?
何故昔と違い、母性を育てる事が、かように面倒なのか?女性の生き方が多様化し、母親が迷っているからだと思います。過去の価値観と今の価値観の狭間で、自分がどうすればいいのか、混乱しているのだと思います。それを救うのは、夫だけではない筈。社会全体で彼女たちを見守る必要を感じました。監督がその思いを込めて描いたのが、アナやサネだと思いました。
自分も傷つきズタズタになったはずのアンドレアスの、穏やかで安堵した表情と子供の笑顔に、最後の最後救われました。母性の敗者復活はあるのです。母親の先輩である私たちは、虐待する母親を、決して見限ってはいけないのだと思います。子育ての苦労を理解し、喜びを伝えるのは、私たちしか出来ないのだから。アナの母親の存在は、それを私たちに促すだめだったと思います。
骨太の作りの中に、繊細に母性と父性の違いを浮き彫りにし、迷える母親たちに社会の理解を求めた作品。やっぱりスサンネ・ビアは素敵です。
05月24日(日)
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