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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「Mommy/マミー」
ここからが、何をやっても上手くいかない。一生懸命ダイアンが模索し、カイラがサポートして知恵を出し合うのに、スティーブンがぶち壊す。途方にくれたダイアンが出した解決策は。
ダイアンは母親と言う生き物そのものでした。子供を食べさせ寝かせ、必死で教育を受けさせる。必死に息子を「大人」にしようとしているのです。そのためには、干からびかけた自分の女も利用しようとする。貧しくて、みっともなくて、息子への愛情だけで生きている人でした。彼女は母親の根源だと思う。自分の吃音の原因であるはずなのに、「私は家庭を捨てられないの」と、寂しく語ったカイラにも娘がいました。解放感だけではないものを、ダイアンから受け取ったのかもしれません。
ダイアンが、スティーブンがこうだったら、と夢想する場面に、もう泣けて泣けて。私はそれほど息子たちに夢を抱いた母ではありませんでしたが、それでもささやかな希望はありました。母として、そのささやかなものまで望めないとしたら?こんな残酷な事はありません。ダイアンの苦悩を、痛いほど伝えるシーンでした。
終盤のダイアンの涙は、この母を独りにしてはいけない。そういう事だと思います。後半からの出来事は、彼女一人で解決にするには、荷が重すぎるのです。世の中が変わらなければいけない。それはこの作品が描く法案ではないのだと思います。
外に向かって走るスティーブンの笑顔で終わる作品。人によって悲劇にもハッピーにも取れるでしょう。私はハッピーだと思いたい。だって母親にとって、子供の笑顔以上に力をくれるものはないのだから。予想していたより、ずっと明るく現実を見据えた作品でした。ポップでユーモラスな場面もあり、解放感と閉塞感の使い分けも見事で、熟練の監督みたい。何より25歳の青年が、これほど「母なるもの」を理解してくれている事に、とにかく感激しました。そのうちハリウッドに呼ばれるだろうけど、どんな化け方をするのか、とても楽しみです。
05月06日(水)
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