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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「物語る私たち」
しかし、サラはハリーを嫌っているわけではありません。この辺は長年の懸念が晴れた事、そしてアーティストとしての好奇心だと感じました。しかし一貫して彼女が「パパ」と呼び続けたのは、マイケルだけでした。

全く男性には恐ろしい話かも知れません(笑)。この作品で痛感するのは、父親の脆弱さです。乳母に虐待されたり、辛かった子供時代を送ったはずの異父兄姉は、自分の意思を持つ頃には、父親違いの兄弟と親睦を持ち、母の元に戻ってくるのです。子供は母親だけのものでありませんが、やはり父親と母親では、根本的に子供の心を占める割合が違うのですね。

最初の結婚で子供と別れた辛さを繰り返したくなくて、ダイアンがマイケルの元に留まったとして、それはマイケルへの愛を疑う事でしょうか?いつも不安に晒され、落ち着かない日々だったでしょう。そういう事に図太い女性であるとの印象はなかったです。自分の子の父親として、ダイアンはハリーよりマイケルを選んだんじゃないかなぁ。

ブラピとアンジーの結婚式がネットを賑わしていますが、6人の子がいなければ、ここまで辿り着けた二人だったかなぁと、私は思います。子を成した責任、養子を迎えた責任。二人の関係の破たんは、即6人の子を傷つけるのです。8人で撮った記念写真からは、私は「育む幸せ」を感じました。それを誰より大切に思っているのは、家庭の愛に恵まれなかったアンジーだと思うのです。

この作品でも、何度も挿入される甥や姪とはしゃぐサラの様子。家庭や家族。例えそこに複雑な血の交わりがあっても、家庭や家族の笑顔こそ、人生の基盤だと監督は言いたいんだと思いました。

しかし、一見スキャンダラスな我が家の秘密を、しっかり映像化して私を大泣きさせるなんぞ、映像作家の業と言うのも、したたかと言うか深いと言うか。この作品には仕掛けもあり、何度も挿入される過去のフィルムがそれ。私が幼い時に、家には8ミリカメラがあったので、アメリカなら当然だろうと思っていたら、目が点になる映像が終盤に。いやはや、すっかり騙されちゃった。もしかして、インタビューのセリフも演出?ちょっと疑心暗鬼にもなりましたが、煙に巻かれず私の感動は真実としよう。映像作家のサラ・ポーリーの今後に、赤丸付の期待です。

09月04日(木)
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