ID:10442
ケイケイの映画日記
by ケイケイ
[927635hit]

■「イン・ザ・ヒーロー」


素晴らしい、素晴らしい!何度でも言っちゃおう、素晴らしい!今では大味だなんだと、ハリウッド大作には文句垂れている私ですが、本格的に映画に魅せられたのは「ポセイドン・アドベンチャー」でした。その後「ジョーズ」や「エクソシスト」などのハリウッド大作にまみれておきながら、大人に近づいた頃には、青臭いちょっとしたシネフィル気取りの頃もありました。今思い出すと、死ぬほど恥ずかしい。この作品はローティーンの頃の、ハリウッド映画に熱狂していた自分を思い出すのです。いつ来て過ぎたんだかわからない今年の夏より、何十倍も熱い作品。監督は武正晴。

ベテランスーツアクターの本城(唐沢寿明)。ブルース・リーに憧れてアクション俳優を目指すも、いつまでも顔出しの出来ないスーツアクターに甘んじる日々。しかしまだまだ希望は捨てていません。そんな役者バカのお蔭で、妻子(和久井映見・杉咲花)には愛想付かされ、去られています。やっとの事で子供向け戦隊もので主役を得るも、寸でのところで新進俳優の一ノ瀬リョウ(福士蒼太)に主役を持っていかれます。それでも腐らない本城に、リョウのマネージャー(小出恵介)は、彼にアクションを教えてやってほしいと言います。しかしジャリ番(子供向け作品)だとバカにするリョウを、本城は自分のアクションチーム「HAC」に連れて行きます。

主演の唐沢寿明、同僚吾郎役の寺島進は、かつて本当にスーツアクターだったとか。そして本当にブルース・リー大好きの唐沢寿明、めちゃめちゃ俊敏な動きで、回し蹴りなんか、とっても早いの!唐沢寿明は私とほぼ同世代なんですが、「燃えよドラゴン」公開時は、そりゃ信じられないくらいの大ブームで、当時小学校高学年〜高校生だった男子は、みんなヌンチャク使えると思います(きっぱり)。品行方正で端正な二枚目役の印象が強い彼が、こんな大バカもん(褒めてます)の役柄で、私の心に火をつけてくれるとは、嬉しい誤算です。

前半は、戦隊モノのアクションシーンのネタバレあれこれ、モーションチャプターは、彼らスタントマンやスーツアクターが演じているなど、ちょっとした内幕風演出が、映画好きには嬉しいです。常に怪我との戦いである彼らは、とにかく己に厳しく練習します。その風景も清々しく、大人のスポ根を観ているようで、またまたテンション上がる私。一人で練習しても、本番は散々だったリョウは、頭を下げて本城に教えを乞います。

映画好きなら、アクションにはアクション監督がいて、きちんと怪我をしないような振付があると知っていますが、素人に毛が生えたようなリョウは、その事は知らなかったのでしょう。そんな人が一足飛びで主役を張り、超がつく一流のアクションが出来る本城はスーツアクターのまま。芸能界の悲哀を見ます。

「アクションはリアクションがあって、初めて成立する」と言う本城。そうなんですよね、時代劇の殺陣でもアクションも、名も無きウケに回ってくれる人が居てこその華。映画はその他美術さん、照明さん、地味な裏方の協力あってこそ作れるものだ、チームワークなんだと、しみじみと思わす描き方に、映画好きの私はまた感激。小道具を粗末に扱うスター俳優リョウに臆せず、「こいつがなぁ、その時計何日徹夜して作ったと思ってんだ!」と、弟子を思う小宮泰隆の小道具さんの恫喝は、良い作品にするため貢献していると言う、美術さんのプライドが溢れていて、やっぱり熱い。

とても素敵だったのが、吾郎の結婚式のシーン。和気藹々と弾けながらも、彼らがスーツアクターとして、自分たちの仕事を愛しているのが、わかるのです。本城の妻も、かつては夫と同じ夢を見ていたのだと、さりげなく挿入されるビデオも良いです。


[5]続きを読む

09月09日(火)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る