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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「あなたを抱きしめる日まで」
対するフィロミナは、赦すと言います。釈然としないマーティンに、「怒るより赦す人生の方が良い」と言い切ります。辛い時苦しい時、彼女はいつも「赦す」と言う選択をしてきのでしょう。何故赦せるのか?それは神を信じていたから。生きるよすがだったのでしょう。自分に与えられたものとして、受け止めてきたのだと思います。知識の薄い、下層階級の老婦人であるフィロミナの強靭な心に、これが宗教の真髄なのかと、感じ入りました。
対するマーティンは「自分は赦せない」と言います。ちなみに私も同意見。それでもフィロミナの意見を尊重するマーティンに成長させたのは、神でも宗教でもなく、彼女の母性だったと思います。
オスカーは逃しましたが、やっぱりデンチはすごい。今回はクセのない本当に善良な普通のおばちゃんです。普通の人ほど、演じるのは難しいはずなのに、本当にチャーミングです。可愛いだけではない、母の子を思う愛情の深さと強さは、何よりも尊い。私もそうでなければと、改めて心に誓いました。クーガンは皮肉屋のインテリからの変遷を、スマートに演じていて素敵でした。小さなマリア像の扱いと、ラストの「その小説の筋を教えて」の車の中の会話のお茶目さが、壮大に流れそうになる感覚を、身近な等身大の物語として引き戻し、観客の人生とリンクさせてくれます。
私が一番感じたのは、息子三人を成人するまで我が手で育てられた、その平凡な事に、心から感謝した事です。社会派の側面や宗教の教義まで上手に折込ながら、でも世の中で最強なのは母の愛だよと、胸を張りたくなる作品です。
03月20日(木)
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