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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「新しき世界」
チョンはジャソンが潜入捜査官だと知っていました。何故彼は殺さなかったのか?同じ華僑だからだと思いました。何度もチョンを「よそ者」呼ばわりする場面があります。韓国人は儒教精神が残っているので、長幼の序はまだあると思いますが、しかしヤクザは下克上。そんな事知っちゃいないの場面もあるのに、何度も出てくる華僑出身の言葉。

チョンは育ちは韓国のはずだし、ジャソンは警察官なのですから、国籍も韓国のはず。捜査上の機密を教えてもらえず、真から信じて貰えない場面を描くのは何故か?全部最後のジャソンの選択を納得させるためのものだったのかと、後から思い起こしました。最後までジャソンを愛し、懐の温もりを与えてくれたのは、同じ血のチョンだったと言う事です。

韓国という国は、大昔は中国の存在に怯え、戦争前後では日本に統治され、今は同じ血の民族同士で対立。どんな時代も強い民族性を持たなければ、生きていけなかった民族です。それが高じて、やり過ぎの今があるのじゃないかと思う訳です。その高い民族性は、他の民族を排他する。今まで自分たちがされていた同じ事を、今度は繰り返す。

ジャソンに寝首を掻かれる様子は、その愚かさを描いているのじゃないかと感じるのです。この作品で、一番観客を惹きつけたのは、チョンのはず。もちろんファン・ジョンミンの好演あってのものですが、あえて華僑のチョンにチャーミングなキャラを背負わせたのは、それを感じ取って欲しかったのかと思いました。

私も彼らと同じ境遇です。ヘイトスピーチには苦笑しながら受け流す。憤慨せず何故それが出来るのか?世界中どこでも同じだからです。韓国は華僑を蔑み、日本は在日を蔑み、欧米に行けば日本人が同じ目に。「未来を生きる君たちへ」を観たとき、デンマーク人がスウェーデンを蔑む様子を観て、欧米は欧米でその構図があるのだと痛感しました。いったい何時になったらなくなるのか。不毛な事だと思います。頂点に立ったはずのジャソンのやるせない表情は、その象徴のように感じました。

私は日本に生きる韓国人として、自分の出自を恨んだ事はありません。でも次に生まれるのは、日本に生きる日本人か、韓国に生きる韓国人でありたい。その方が楽だから。私の思いは、チョンやジャソンも共有しているはずです。この作品のタイトル「新世界」は、ジャソンのものだけではない、深い意味が込められていると、私は思いたいです。

この作品は、これから前日譜、続編と三部作の予定だとか。私の読みが深読みかどうか、楽しみに待っています。

02月21日(金)
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