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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「凶悪」
藤井の記事が発端で、結局木村は逮捕。今度は木村にアプローチする藤井。「俺は死刑にはならないよ」と嘯く木村です。「俺を死刑にしたいのは、須藤じゃなくて」と言いつつ、薄笑いしながら、面会室のガラスをトントンと叩き、藤井を指差ず場面が秀逸。あれは藤井だけではなく、世間を指差しているんでしょうね。そういう思いは、この手の犯罪が明るみに出たとき、確かに世間が共有する感情ですから。

唯一私が残念に思ったのは、藤井の家庭の描写です。仕事にかまけて、認知症の母(吉村実子)の面倒を妻に任せきりにして、家庭は崩壊寸前です。その設定は良いのですが、描き方が雑。家庭を顧みず自分とも親とも向き合わない夫に、妻が怒り追い詰めるのはすごくわかる。でも「もう限界」は、あれくらいの描写では納得出来ません。ヘルパーが入っているとセリフにあるので、介護保険を使っているのでしょう。妻が留守出来るくらいなので、要支援ではなく、要介護を取っていると思われます。それなら少しでも子供が息抜き出来る様に、デイサービスやショートステイに通わせれば?言っても夫がわからないのなら、妻はケアマネや行政に頼る事は出来たはず。その描写がないので、切羽詰った感は、私は乏しかったです。徘徊も食い止めるのではなく、昼夜逆転して夜中に探し回るとか、失禁とか、もっと描きこめば良かったと思います。

ピエール瀧とリリーさんがあんまり上手いので、演技派として名高い山田孝之が霞んでしまう程。でもこれは、計算していたのかも?二人が引き立つ事で、より訴える事が鮮明になるから。しかし、自分たちは人の命をむしり取り悪行の限りを尽くしても、自分は生きたいのだね。凶暴で強欲なこんな犯罪者は、これからもいっぱい出てくるのだろうなぁと、そこには暗澹たる気持ちになるのでした。





 

09月25日(水)
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