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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「華麗なるギャツビー」
ギャツビーのお葬式に出席者をと、奔走するニック。しかし誰も来ない。あれだけ彼のお金を湯水の如く使った人達なのに。でも私は可哀想とは思いません。ギャツビーは食い物にされたのではなく、彼がそうしたかったから、人が集まっただけ。みんな本当の彼がどんな人が知らない。ギャツビーは最後まで「どこの馬の骨かわからない」人で終わってしまいました。ニックがギャツビーに心寄せたのは、ギャツビーが心を開き、本当の自分を見せたから。ギャツビーを追い詰めたのは、卑しい自分の出自が許せなかった、自分自身なんだと思います。私もお金で幸せは買えないと思います。

実は私が一番生々しく理解出来たのは、トム。お金持ちの俗物で女好き。お高いデイジーと下世話なマートルで、バランスを取っていたのでしょう。両方に不実なのに、彼なりに尊重してたつもりなのでしょう。だから自分の手からすり抜けそうになると、必死でしがみつくのは、わかるなぁ。悪漢ですが、彼の行動はよくわかります。

一部始終を冷静に見守っていたニック。冒頭でアルコール依存だと描かれますが、これも納得。これだけ人の心の裏側ばかり見せられたら、アルコールに逃げたくもなるでしょう。しかし原作者フィッツジェラルドを想起させるニックが、もがき苦しんだ後に書かれたギャツビーの伝記は、人間はひと皮剥けば皆いっしょ、貧富の差や身分の差など、その後の努力で挽回できるはずだ、と教えてくれます。最後に書いた「GREAT 」の文字は、ニックからギャツビーの人生への、最高の餞なのではないでしょうか。たった独りでも、ギャツビーを愛し理解してくれた人がいた事は、このお話を救いのあるものにしています。

06月20日(木)
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