ID:10442
ケイケイの映画日記
by ケイケイ
[927771hit]

■「裏切りのサーカス」
オールドマンは今作でオスカーノミニーでした。シド・ビシャスやドラキュラ、オズワイルドなど、特異な役柄が多くてエキセントリックなイメージがある彼ですが、私が一番好きな彼は、どうしようもなく情けない男だった「蜘蛛女」のゲイリー。今回は優秀でどこまでも冷静、しかし妻が弱点というスマイリーを、ほとんど喜怒哀楽の表情なしで、静かに演じています。ほんの僅かな表情の差で、スマイリーの心の機微を表現して絶品でした。

キャストは全部渋くて素敵だったけど、特に良かったのはマーク・ストロングとトム・ハーディ。マークは普段は悪役が多いのですが、彼のスケールがそれほど大きくないので、何だか小物っぽいネズミに感じるのですが、今回の彼は繊細な役柄で、ハンサム度が異常にアップして本当に素敵でした。クリスマスパーティーである人にかける微笑みが、後の事柄の悲劇を一層切ないものにしています。トムの役柄は、最初はマイケル・ファスベンダーだったそうですが、マイケルが降りトムに廻ってきたとか。そのチャンスを生かし、頭脳プレイの幹部スパイと異なる、実行部隊であるスパイの悲哀が、充分に感じられる好演でした。

ラストの安堵の微笑みは、複雑な色んな意味を含んでいると感じました。と、書けるのはここまで。とても面白かった、今年の私的ベスト10に入れたいとだけ記しておきます。地味ですがただの推理ものにはない奥行と、人生にまで考えを及ばせる秀作でした。

05月06日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る