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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ヘルプ〜心がつなぐストーリー」
シーリアは上流階級の出身ではないですが、桁外れにお金持ちの夫と結婚します。気は優しいけど少々天然で空気が読めません。夫はヒリーの元彼。ヒリーが先導をして、仲間外れにして見下す材料に十分です。しかし夫がヒリーではなくシーリアを選んだのは、玉の輿を喜ぶでもなく、夫に見合う女性になろう一生懸命な、健気さと純粋さに惹かれたのでしょう。あなたは奥様だからとミニーがたしなめるのに、一緒にランチを取ろうとするシーリア。毒舌家ながら、料理自慢で温かいミニーを慕っているのです。多分シーリアは、メイドを雇う暮らしをしていなかったのでしょう。この夫婦の他にも、インタビューで優しかった雇い主の想い出話をする老メイドたちを配し、白人にも見易く共感を得られる作りにしたので、素直に観てもらえるでしょう。大切なのは両方に観て貰うこと。過去を知ることは今に繋がり、未来を作って行く事だから。
オスカーの主演女優賞候補にもなったヴィオラ・デイビスは、抑えた演技の中、黒人である苦しみから、段々と気難しくなっていくエイビリーンの過去まで想起させます。オクタビアももちろん良いです。白人には時として牙を向くのに、夫のDVには耐え忍ぶ姿もまた、当時の黒人女性の典型だったのかも知れません。ジェシカ・チャスティンは儲け役ですが、「ツリー・オブ・ライフ」とは180度違う女性役ですが、難なくこなしています。
以上はオスカーノミニー、又は受賞者ですが、私がすごく気に入ったのはエマとブライス。エマは溌剌として聡明なスキーターを、彼女自身かしら?と感じさせる演技でした。新作の「スパイダーマン」は興味なかったけど、エマがヒロインなので是非観なくっちゃ。ブライスは敵役ですが、姿形も一番60年代が似合い、鼻持ちならないヒリーを、何だか嬉々として演じているのです。美貌の人ですが、案外コメディも行けるかも?
ラストは曖昧です。この後も黒人たちの風雪は続く予感を残しながら、しかし生まれ変わったように強くなった彼女たちを映します。今の権利を勝ち取るのに、50年かかったのですね。黒人差別だけではなく、女性の開放も忍ばせて描いた作品です。二時間半があっという間で、温故知新と言う言葉を贈りたい作品です。
04月05日(木)
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